こんにちは福田です。趣味のオーディオに最近限界を感じているこの頃ですが、何が限界かというと、CDや、PCの音などデジタルの音は、DACがなければ耳に聞けないので、DACが重要な位置を占めることになるのですが、DAC選びに迷ってしまい音楽を聴くのがおっくうになっています。いっそのこと、昔のアナログレコードプレーヤーを持ち出してまたLPでも聞こうかなと思います。 さて、前置きが長くなりましたが、家のローンとか車のローンのシミュレーションはみなさんお聞きになったことがおありだと思いますが、今回はマンションの修繕計画のシミュレーション=予測のお話です。
予測・・・とは、天気予報、地震発生予報、などいろいろと重要な予測がありますが、修繕計画シミュレーション=予測は主に修繕積立金の収支の予測になりますね。黒字でいけるのか、途中で赤字になるのか、予測するためのシミュレーションです。 最初に必要なことは例えば今後25年間の予測をするとして、25年間に必要な、発生するであろう修繕工事を予測することから始まります。約12年ごとの大規模修繕工事はその中で代表的な修繕工事になります。下記に想定される修繕項目を参考までにピックアップしてみました。
- 予測される修繕工事項目
- 修繕周期(耐用年数)の設定について
- 工事費の価格設定
- 収支のシミュレーション
- まとめ
予測される修繕工事項目
- 大規模修繕工事・・・コンクリートのひび割れ補修工事等、外壁塗装工事、防水工事、シーリング工事、鉄部塗装工事、そして最近オリンピックの影響で高騰している仮設工事などがあります。
- 玄関ドアーの更新工事
- 集合ポストの 〃
- 物干し金物の 〃
- アルミサッシの戸車の更新工事、またはサッシの更新工事
- 通気ガラリの 〃
- 駐輪ラックの 〃
- エントランスのリニューアル工事
- インターフォンの更新工事
- エレベーターの 〃
- 機械式駐車場の 〃
- 給水管の 〃
- 排水管の 〃
- 共用部の照明・盤類等の 〃
- 消防設備の 〃
- 給水ポンプの 〃
- 受水槽の 〃
- 避難ハッチの 〃
- 避雷針の 〃
いやいやたくさんありますね・・・。どれも避けて通れない工事ばかりですね。良好な資産価値を維持していく上に必要な事項ばかりです。意外なのは、みなさんご存じないかもしれませんが、エレベーター、機械式駐車場は築30年目あたりで、修繕部品の供給がストップすることです。安全第一な設備ですので27~30年目をめどにリニューアル計画が必要になってきます。エレベーターは必要ですので更新せざるを得ませんが、機械式駐車場は、もともとメンテナンス費用が高く、更新費用も多大な費用がので、更新はあきらめて部分的に、もしくは全体を破棄する場合があります。
修繕周期(耐用年数)の設定について
「耐用年数」については様々な業界から公表されています。例えば、日本建設業会、日本建築学会、日本不動産協会、ロングライフビル推進協会(BELCA)、等々その内容も様々です。 この耐用年数の設定はシミュレーションするにあたり重要な要素になります。過去のマンションの修繕履歴を紐解き、今後どのくらいの頻度で修繕が発生するかシミュレーションします。 また、面白いことに税法上の耐用年数が別にあります。鉄筋コンクリートの耐用年数は以前まで60年でしたが、最近、住宅用は47年に短縮されています。これは償却年数としての耐用年数であり、いまでもマンションは60年の耐用年数しかないと思っていらしゃる方がほとんどです。日本におけるコンクリート建物がまだ歴史が浅くて100年に届くのはほとんど数えるほどしかないのが実情ですので無理もありませんね・・・。
工事費の価格設定
ここからは、いよいよ工事費の設定になります。15~20年後の工事費の算出はどうやって出すのでしょうか?まず、竣工図面や過去の大規模修繕工事の見積内訳書などを参考に、数量を拾い出します。そして、拾い出した数量に設定工事価格を掛けます。また、3回目、4回目の大規模修繕工事時は通常の場合と比較して割高な工事になるため(「築36年~40年のマンション大規模修繕工事|3回目と4回目の違い」のブログを参照)注意が必要です。 この時点の工事価格はあくまでも予測上の工事単価になります。20年後は消費税率や物価の変動やいろいろな変動があることでしょうが、あくまで現状で予測できる範囲の工事費価格設定になります。
収支のシミュレーション
修繕項目・周期・工事費が決まったら最後に毎年積み立てられる修繕積立金収入等とシミュレーションした工事費の支出との照合をします。これで今後の収支の結果が表れます。何年後に資金不足になるのか、現状積立金のままで何年間維持できるのか、どのくらいの積立金の値上げが必要なのか収支表として表せます。
まとめ
最初に作成した収支表は残念ながら、25年間も使えません。マンションの劣化状況、消費税の変動、建設物価の高騰など常に変化が起きているため定期的な見直しが必要になります。特に、建物の劣化状況においては、1回/年くらいの定期的な観察が必要です。場合によっては修繕周期を早めることが必要になるかもしれませんし、逆に劣化の進行が許容の範囲内であれば延期することもよいでしょう。3~5年毎に定期的な見直しで修繕時期を再設定する必要があります。 「シミュレーション」はあくまでも予測ですのでこのシミュレーション通りに工事を行う必要はありません。重要なのは特に大規模修繕工事のような大きな工事の前年に建物劣化診断を行い工事の必要性があるのかどうかの判断が必要なことです。 長期修繕計画書(案)は今後の計画修繕の目安として、そして管理組合の大切な資料として保管(標準管理規約で定められています)が必要になります。 マンションの売買時には、売主は新築マンションの購入時と同様、中古マンション購入時にも購入者に対し「長期修繕計画」の提示が必要になります。もし長期修繕計画書(案)がないと購入者は不安になります。 「備えあれば憂いなし」ですね。
福田 純行
前職の設計事務所時代に手掛けた設計・監理物件は北海道は北見市から南は長崎の佐世保市まで。今となってはとても懐かしい。現在は主にマンションの大規模修繕工事に関するコンサルティング(大規模修繕工事の改修設計・長期修繕計画(案)の作成等)を担当。人が住むマンションのストーリーを一つずつ守るのが役目です。
目指せ、「チェンジ・ザ・ワールド」・E.クリプトン・・・・グルーブな仕事を
皆さんのために。
有資格:一級建築士
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