管理費等の滞納問題を解決するには
平成25年度の国土交通省マンション総合調査によると、管理費等の滞納(3か月以上)が発生している管理組合は、全体の37.0%となっています。
今回は、滞納発生原因、督促手順、滞納防止策、管理組合の対応等について考えてみましょう。
目次
- 管理費等の滞納発生原因と対応例
- 督促の手順例
- 法的処置の検討
- 滞納防止策
- 特殊な事例
- まとめ
えっ!マンションで管理費を滞納している人がいるなんて信じられない。管理規約には「費用の負担として、区分所有者は、敷地及び共用部分等の管理に要する経費に充てるため、管理費等を管理組合に納入しなければならない」と書かれていますよね。
確かにおっしゃるとおりです。でも、平成25年度マンション総合調査によると、約4割のマンションで管理費等の滞納(3か月以上)があることも事実です。
同じマンションの居住者で揉め事を起こしたくないなど是々非々の対応ができなくて困っている管理組合も多いかと思います。
管理費等の滞納発生原因と対応例
滞納原因にはいろいろなケースがあります。原因をよく調査し、そのうえで対応策を考える必要があります。
督促の手順例
一般的な督促として、督促状の配付または送付、電話、戸別訪問、催告があります。
管理費等の滞納発生から1~3か月程度の場合のポイント
■電話による督促
電話による督促は、相手が見えないだけに相当の注意が必要です。
次の点に配慮が必要です。
- 電話をかける前に入金されていないか再度の確認
- 管理費等の性格を相手方に理解してもらうこと
- 電話をかけるときは、タイミングをはかり電話をすること
■通常文書による督促
滞納状況に合わせ督促内容を変えると、効果的な場合があります。
- 初期段階の場合「管理費が未納であること」について、注意喚起の督促
- 中期段階では、再度の注意喚起をするとともに、遅延損害金の加算等を含め、管理組合として問題視していることを分からせるような督促
- 後期段階では、管理組合として法的手段を考慮していることを伝える督促
■訪問督促
訪問督促にあたっては、次の点に留意する必要があります。
- 自宅訪問による督促は、複数の役員等で訪問すること
- 理事会で管理運営上の支障となっていることに言及すること
- 入金予定日を確認し、入金予定日記載の文書を取り交わすこと
- 口頭での入金約束を取り交わす場合、必ずメモし、相手側に入金予定日のメモを確認してもらう
■具体的な督促方法
- 1か月以内の滞納者に「督促状の配付または送付」を行います。納入期日後の収納状況を確認し、未納者に直ちに通知します。
- 滞納が2か月経過した段階で「電話」をします。自宅に電話をし、支払いの確約を得るまで督促します。後日のため日時、状況等を記録しておきます。
- 3か月も滞納が続く場合、「戸別訪問」をします。直接面談して、滞納の原因を的確に把握します。経済的な理由があれば、分割請求等の相手の事情を考慮することも大事です。管理費等値上げの反対等による故意の不払いであれば、説得して不満等の解消に努めます。
管理費等の滞納発生から6か月を経過した場合のポイント
■内容証明郵便
法的措置をとる前の最後の手段として、6か月以上滞納が続いている場合は、「催告」を行います。通常は内容証明郵便または配達証明郵便で、理事長から滞納者に対し、債務の履行を要求する意思を通知します。これは請求の事実を証明するもので、法的処置に移行するための処置でもあります。
■内容証明郵便の効果
内容証明郵便は手紙の一種であり、督促自体に強制力を生じさせるものではありません。滞納者は、内容証明郵便を見て、自発的に支払うこともありますので、有効な手段といえます。また、次の手として管理組合が法的な措置を含めた対応を滞納者に予測させるという点では効果があります。
■内容証明郵便の作成方法
作成方法は、1枚の用紙に書ける文字は「1行20字×26行」で用紙の制限はなく、同文のものを3通(管理組合用、郵便局保管用、相手方用)作成します。記載内容は、本文の中に、支払義務(管理規約の根拠規定)、滞納期間、滞納金額、遅延損害金額、支払期限、作成年月日等を明確に記載します。末尾には、差出人(理事長等)、相手方(滞納者)の住所および指名を記載します。
法的処置の検討
一般的な督促で問題が解決しなかった場合は、悪質な未納者を放置することになり、管理組合の運営に悪影響を及ぼします。費用がかかっても徴収する姿勢を示す必要があります。法的対応には難しい面もありますので、弁護士等の専門家に依頼したほうがよいケースが多いです。
- 弁護士による内容証明郵便
- 少額訴訟制度
- 訴訟
- 先取特権の実行
- 区分所有者からの排除など
滞納防止策
管理費等の滞納者は、真面目に納入している他の組合員に必要な費用負担を立て替えてもらっていることになります。したがって、所定期日までに納入するよう呼び掛ける「広報」が必要です。広報のほかに、滞納の各段階で「どのような順序、方法で督促する」といった滞納の「督促処理細則」等を明確に規定し、組合員に周知することにより意識を高めることも大事です。
督促には時間と費用がかかります。遅延損害金や完納までに要した実費を滞納者が負担することや、滞納に関する弁護士その他の訴訟に要する費用について実費相当額を請求できるよう管理規約等に定めておくことは、全体の公平を図るうえからも必要です。
特殊な事例
ある区分所有者が自宅マンションを売却中に死亡。
すでに離婚の妻やその子は相続を放棄していた。司法書士に依頼し、他の相続人全員に請求書面を送るも、全員から相続放棄をした旨の連絡を受けるとともに、「相続放棄申述受理証明書」が送られてきた。相続人がいない状態になり、管理費等の滞納額が増え続ける。
この場合の解決策として、
- 相続人(包括承継人)が存在するかどうかの調査をするとともに、家庭裁判所で相続の放棄の有無を確認する必要があります。
- 公租公課による差押え状況、抵当権等の設定有無を登記簿で調べ、競売される可能性がある場合は、滞納額の通知が必要になります。
- 弁護士等に相続財産管理人選任の手続きを依頼する。財産管理人による調査・任意売却・競売申立を行い、新区分所有者から未納の共益費等を回収します。
まとめ
管理費等の滞納問題を解決するための特効薬はありません。地道に、滞納原因や滞納状況に応じた督促をするしかありません。
滞納金額が増えると、管理組合運営に重大な影響をきたします。したがって、督促する側、督促される側にも精神的な苦痛が生じますが、未収入金の徴収については、積極的な対応が必要です。
まずは、毎月の会計報告を見て、管理費等の滞納住戸を把握しましょう。
なお、会計書類にはプライバシーに係る記載があり、総会で決算資料として報告する場合も滞納者名を伏せるなどの配慮が必要です。
北林真一
大学卒業後、一貫して不動産業界に従事してきました。
皆さまの大事なお住まい(マンション)のことは私にお任せください。
【得意分野】・合意形成の進め方 ・大規模修繕工事
【モットー】謙虚であれ、誠実であれ
【特技】日本酒と音楽(邦楽除く)は少しだけ詳しいです。
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