こんにちは。元気いっぱい夢いっぱい。あなぶき建設工業の西口です。
人生常に発見の連続、そして日々勉強。
マンション・ビル等の新築・大規模修繕工事の現場監督を経て、現在は建設推進室という部署で各現場の安全、品質検査等の業務を行っております。
現場でのお客様との関わりを大切にして、日々の業務に努めております。
そんな業務の中での発見や気づきなどを発信し、
少しでもブログ読者の皆様に有益な情報がお届けできれば幸いです。
本記事では、主にマンション管理組合様・マンションオーナー様向けにブログを書いていこうと思います。特に大規模修繕工事など工事に関わる内容を中心に管理組合様に向けてブログを発信していきます。
今回は、外壁タイル工事におけるタイルの剥離・剥落を防ぐ為の事前調査における『タイル引張試験(接着力試験)』についてご紹介いたします。
はじめに
外壁タイルは、耐久性・耐候性に優れている為、鉄筋コンクリート造の建物の仕上げ材として非常によく使用されています。タイルは仕上げ材として優れていますが、経年劣化などにより浮きやひび割れ等が発生します。そのため、外壁塗装など他の仕上げ材と同様に定期的なメンテナンスが必要です。
タイルやタイル下地は、湿度や温度の変化によって膨張・収縮します。素材の性質が異なる為、膨張・収縮の変化量が異なり、時間の経過・環境の変化とともに徐々に劣化していき、剥離や剥落の危険性が高まります。
タイル引張試験(接着力試験)とは?
タイルの接着状況を確認する方法として、一般的に打診棒など専用検査道具による打診調査と引張試験機による接着力試験があります。
打診調査は先端に球体のついた棒を壁面上で転がしたり、叩いた際に聞こえる音の違いでタイルの接着状況(浮き状況)を確認する調査です。
引張試験(接着力試験)は専用の引張試験機でタイルを引っ張り、タイルが剥がれる際にかかる力を数値で確認し、調査する方法です。
タイル打診調査は、全面調査など広範囲の調査が可能ですが、タイル引張試験は抜き取りによる部分調査が一般的です。施工後の検査として行う引張試験は、公共工事標準仕様書では、100㎡につき1箇所、全体で3ヶ所以上することとなっています。
目的
タイル引張試験は施工したタイルの剥離や剥落がないよう、施工後のタイル引張試験を実施し、規定値以上の力に耐えることができるかを確認するのはもちろんですが、新築時の既存タイルの接着状況を調査する場合もあります。規定値以上の引張力に耐えることを確認することで、タイルの剥離、剥落による事故を防ぎます。
例えば、新築時に施工された磁器タイル及び下地モルタル、コンクリートは経年劣化によりそれら自体の強度が低下し、コンクリート・下地モルタル・磁器タイルの層間で接着力強度が低下していきます。
大規模修繕工事時に健全部と思われる磁器タイルの下地強度及び接着力の有無を抜き取りで調査する場合や、タイル貼りに伴う下地調整後の下地強度・接着力の状態を確認することを目的にタイル引張試験を実施します。
測定機器
①引張試験機
②2液形エポキシ樹脂系速乾形接着剤
③試験工具(鋼製アタッチメント)
試験方法
①試験面に縦45mm×横95mm(4,275㎟)の「鋼製アタッチメント」を「2液形エポキシ樹脂系速乾形接着剤」にて取り付けます。
②正確に、「4,275㎟」当たりの荷重力を測定する為に、「鋼製アタッチメント」の縁に沿って下地コンクリートをコンクリートカッターで切断し、周囲と絶縁します。
③接着剤硬化後、「油圧式引張試験機」を「鋼製アタッチメント」にセットして引張り、試験面の強度を測定します。
④測定値を面積で除し、1㎟当たりの付着強度を確認します。(単位は、N/㎟)
合格基準(セメントモルタル貼りの場合)
現場施工時のタイル「0.4N/㎟」以上の 数値が得られ、かつ、界面(タイルと下地等の接している境界面)破壊率が規定値以上であれば「現状磁器タイルと下地の接着状態」は「良好」と判断されます。
※一般的な45二丁掛タイルと呼ばれるタイルサイズ(縦45mm×横95mm)の引張試験を行う際は、以下の計算式により付着力強度を計算します。
【計算式】付着力強度(N/㎟)=荷重力(N)/4,275(㎟)
*タイルサイズ 縦45mm×横95mm=4,275㎟の場合
※ただし、有機系接着剤貼りの場合の規定値については建築の専門書(建築改修工事監理指針)に記載されています。
万が一、タイル引張試験により、不合格判定が出た場合、不合格箇所周辺の打診調査も併せて実施します。
引張試験後のタイル裏面の破壊状況や周辺タイルの浮きの範囲により、設計監理者様等と協議の上、施工方法を決定します。
タイルの浮き範囲が狭い場合(一般的に99枚以下)は、タイルのアンカーピンニングエポキシ樹脂注入工法(専用接着剤によるタイルの固定工法)、タイルの浮き範囲が広い場合(一般的に100枚以上)はタイル貼替による工法を選択するのが一般的です。
※ただし、タイルの浮き範囲による工法選定は、各現場の諸条件により異なります。
まとめ
最後に、マンションに安心して住み続ける為に外壁タイルの大規模修繕工事を行う事が必要ですが、現状の劣化具合を確認し、適切な補修方法を検討することが重要です。必要に応じて、タイル引張試験による調査を実施することで調査段階からマンションの状況を把握し、大規模修繕工事後にも末永く安心して暮らしていただけるような工事を目指し、日々現場管理を行っております。
西口洸平
西口 洸平(にしぐち こうへい)
新築工事、大規模修繕工事の現場監督を経て、
現在は建設統括本部にて現場の後方支援を行っております。
趣味ではありませんが、好きなことは現場近くや出張先で美味しいご飯を食べることです。
ご飯を食べると思わず『ウマッ』と声に出てしまうので、会社の人によく笑われます。
経験豊富な上司や好奇心旺盛な後輩がいる会社で毎日楽しく働いております。
本ブログでは現場で培った経験等を活かし、ブログ読者の皆様に
有意義な情報発信となるよう努めて参ります。
保有資格:1級建築施工管理技士
最新記事 by 西口洸平 (すべて見る)
- 知っておきたい大規模修繕工事後の【バルコニー床塩ビシートのお手入れ】 - 2022年10月10日
- 知っておきたいマンションの【音によるマーキング調査】 - 2022年7月7日
- 知っておきたい駐車場の【アスファルト舗装】 - 2022年6月7日