マンション管理組合役員の方に伝えたい、大規模修繕工事が大切な3つの理由

中西克彦

私は現在、マンションの大規模修繕工事の現場代理人としてマンションの修繕工事を担当しています。
その観点から、マンションの大規模修繕工事の大切さをお伝えしたいと思います。

↑外壁調査の一例

1.安全性の確保(タイルが落ちてくるリスク)

マンションの大規模修繕工事を行う理由の一番目は安全性の確保です。
マンションの外壁にはタイル張り仕上げが多く採用されています。
その理由としては、高級感があり見栄えがいいというビジュアル的な理由や、コンクリートの躯体を酸性雨などから守ってくれるという構造的な理由があげられます。

近年、そのマンションのタイルが剥がれて落下する事故が相次いでおります。
タイルが剥がれる場合は通常1枚だけではなく、何枚かまとめて剥がれてきます。そのようなタイルの塊が歩行者や車に当たると大変大きな被害が発生してしまいます。

タイルの落下は、ある日突然発生します。
そのため法律で、新築・外壁工事後10年を超えたマンションやビル等は外壁の調査が義務となっています。

大規模修繕工事ではマンション全体に足場をかけて、まず外壁タイルの状態を調査することから始まります。
マンションのタイルは10センチ×5センチのサイズが多く使用されています。
タイルの数量も莫大で、全体のタイル張りの枚数が100万枚を超えることも珍しくありません。
そのため外壁調査も大変な労力と時間がかかります。どの部分のタイルがどのくらい補修が必要なのかを把握し、記録するには、足元が安全な作業床が必要です。
大規模修繕工事では最初に外壁に足場を組み立ててから外壁を調査する方法が一般的です。
外壁調査のあとは足場を使って、タイルの補修や塗装・防水などの工事を行っていきます。

 

2.マンションの品格

築年数が増すとマンションに歴史が感じられ、さらに重厚感が増す一方、古さを感じるようにもなります。
品質・品格を維持したい。それがマンションの大規模修繕工事を行う2番目の理由です。

マンションを購入する理由として、共用部の高級感が魅力だという人が多くいると思います。
新築当初は高級感のあったマンションでも徐々に劣化が進んでいきます。自宅の住居内をリフォームしても、エントランスや廊下、外壁が年数相応に劣化してくるとマンション自体の古さは隠せなくなります。
友人知人・親族を自宅マンションに招いたとき、共用廊下の塗装がぼろぼろになり、床のシートが剥がれているところは見せたくはないものです。

できれば「長期修繕計画」でマンション全体の修繕サイクルを検討し、劣化が目に見える前に修繕を行う「予防保全」で修繕を行う方法で、マンションの「品格」を守ってもらいたいと思います。

 

↑共用の展望風呂付マンション

3.建物の防水性を高めるため

マンションの大規模修繕工事をする理由の3番目は「雨水の漏水」です。屋上や外壁から雨水が漏水してくる場合、どこから雨が入ってくるのかの特定がとても困難です。

住宅品質確保促進法により、構造部分(屋上や外壁等)からの雨水の浸入は新築から10年の瑕疵担保責任が定められています。その間は雨水の漏水による問題が大きく発展することは最近ではあまり聞かなくなりました。ただ瑕疵担保責任が終わる10年以降となると防水材の経年劣化が進み、雨水の漏水の心配も出てきます。
そのため築10年を超えて大規模修繕工事を行うまでは雨水の漏水に関する保証が無い状態になります。

雨水の漏水は発生してから対応するのでは居住者が大変な不便をこうむります。できれば不具合が出る前に計画的に大規模修繕工事を実施して、防水性を確実にするほうが良いと思います。

また、マンションの管理会社や分譲会社などによっては、雨水の漏水保証の無い10年超えから大規模修繕工事までの数年間をサポートするような独自の保証システムを導入しているところもあります。
興味のある方は確認をしてみてください。

 

まとめ:住民全員の満足のためにはどうしたらいいの?

大規模修繕工事はマンションを定期的にリフレッシュする大切なイベントです。
住民全員の満足を実現するためには、値段だけにとらわれず、高品質で対応のよい工事会社を選ぶことが重要です。

そのためにはマンション管理組合役員の方が中心となり、幅広く情報のアンテナを張り、工事会社の選定をしてもらいたいと思います。

 

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中西克彦

あなぶき建設工業 中西 克彦(なかにし かつひこ)
2013年入社。中四国・近畿を中心にマンション大規模修繕工事の現場管理をしています。
県外の物件に行くときはアプリで美味しいお店をチェックすることが楽しみです。
保有資格:1級建築士・1級建築施工管理技士
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