地震保険の加入を検討するときに知っておきたい6つの基礎知識

後藤隆史

おはようございます。あなぶきセザールサポートで保険業務を担当しております後藤です。

マンション管理組合の理事会や総会でマンション共用部火災保険に地震保険を付帯するか否かについて協議をされた経験はありませんか?

地震保険を付帯する場合は保険料が高くなってしまうため、管理組合の収支状況を考え判断に迷う管理組合様は多いと思います。

最近では2016年4月に熊本地震が発生し、家屋が倒壊や半壊しており、多くの被災者が今も避難せざるを得ない状況となっております。

このような大きな震災があった際にテレビや新聞で地震保険について目にする機会があると思います。

今回はイマイチよくわからない地震保険について2回に分けてご紹介いたします。

まず第1回目は地震保険の6つの基礎知識についてご紹介いたします。

 

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目次

  • ①地震保険の役割とは
  • ②地震保険の補償対象とは
  • ③どのような場合に地震保険は補償するの?
  • ④損害の程度により保険金支払額が異なる
  • ⑤地震保険の加入率を知る
  • ⑥地震保険と政府との関係とは
  • まとめ

 

※2016年6月11日に公開した記事を2017年3月18日に修正し再度公開したものです。

 

①地震保険の役割とは

「地震保険は被災した建物を元どおりにする費用が支払われるんじゃないの?」と思われる方は多いのではないでしょうか。

当社でも実際に理事会や総会でも同様の質問を受けることがあります。

火災保険であれば全焼した場合に設定した保険金額によっては建替えができるほどの保険金が支払われる場合があります。万が一の火災によって資産がなくなるリスクを転嫁することができるため、地震保険でも同様ではないかと考える気持ちは分かります。

しかし、地震保険の役割は被災後の当面の生活を支える保険であり、地震保険の保険金だけでは必ずしも被災建物を元に戻すほどの充分な保険金が支払われない可能性があります。

ただし、支払われた保険金を建物を元どおりにする資金の一部に充てることは可能です。

 

②地震保険の補償対象とは

地震保険は一般の住宅(マンションの専有部分を含む。)の場合は「建物」「家財」にそれぞれ一方または両方を付帯することが可能です。

マンション共用部の場合には「建物」「共用動産(集会室にある机や椅子などの管理組合が所有する動かせるモノなど)に付帯することが可能ですが、当社が管理するマンションの場合では「建物」のみに地震保険を付帯する管理組合がほとんどです。

また、地震保険は単独で加入することはできません。これは、地震保険に関する法律で決められており、必ず火災保険に付帯して加入することが必要です。

 

③どのような場合に地震保険は補償するの?

地震保険は地震だけではなく噴火またはこれらによる津波を原因とする火災、損壊、埋没、または流出による損害を補償します。

火災保険では上記の損害を原因とする火災については補償の対象ではないため、これらの損害をカバーしたいとお考えの場合には、地震保険を付帯する必要があります。

なぜ、これらを原因とする火災は支払の対象とならないのでしょうか。それは以下の点から通常の損害とは異なる性質を持っているからです。

発生時期と頻度の予測が困難

現在、様々な地震予知・地震予測の研究が行われていますが、確実な発生時期や頻度の特定ができるものは発表されておらず、いまだ予測は困難といわれております。

巨大損害・広域災害の可能性

火災保険を含む損害保険は偶然の事故による損害を補償するため、統計学によりリスクに応じた保険料を算出しております。これは大数の法則に基づいています。

しかし、地震が発生してしまうと被害は広範囲にわたり、場合によっては損害が巨大となる可能性があり、これでは保険制度として成り立たなくなってしまいます。

 

④損害の程度により保険金支払額が異なる

地震保険は損害の程度によって「全損」「半損」「一部損」の損害区分で認定され、それぞれ付帯した保険金額の「100%」「50%」「5%」が支払われます。

損害が一部損に至らない場合や、門・塀・垣・エレベーター・給排水設備のみの損害の場合は保険金は支払われません。

また、この損害区分については2017年1月に改定がされました。詳しくは次回ご紹介します。

 

⑤地震保険加入率を知る

地震保険の加入率はどのくらいかご存知でしょうか?

日本損害保険協会のデータによると2014年度時点での世帯別地震保険加入率の全国平均は28.8%です。(当該年度12月末の地震保険契約件数を当該年度1月1日時点の住民基本台帳に基づく世帯数で除した数値)

マンション共用部分の地震保険加入率は2012年のデータによると全国平均は35%です。まだ半数以上のマンション管理組合では地震保険を付帯していないという状況です。

当社の管理させていただいているマンションの地震保険加入率は56.4%と半数以上の管理組合様でご加入いただいております。

 

⑥地震保険と政府との関係とは

ご存知の方も多いでしょうが、地震保険は民間の損害保険会社のみが補償するものではありません。

関東大震災のような巨大損害を伴う地震が発生した場合、多額の保険金支払いが予想されますが、民間保険会社の支払能力には限度があり、保険金を支払いきれない可能性があります。

そこで、政府が再保険を引き受けることにより、大災害時においても保険金の支払いが確実に行われるような仕組みで運用しています。

しかし、政府が関与するとしても無限に補償することは不可能なため、1回の地震で支払われる保険金額の上限(保険金総支払限度額)が設定されています。

2016年4月時点での保険金総支払限度額は11.3兆円と定めています。

 

まとめ

第1回目は地震保険の概要についてご紹介しました。東日本大震災の発生以降は当社が管理させていただいているマンションでも地震保険加入についての相談が多くあります。これまで理事会や総会などで地震保険の加入について議論されていないようでしたら、ぜひこの機会に一度理事会でお話ししていただければと思います。

次回は、過去に発生した地震において当社が管理させていただいているマンションでの保険金支払の対象となった事例と2017年1月に改定となる部分についてご紹介いたします。

<参考>
地震保険に関しての入門編はコチラ→「いまさら聞けない!?地震保険とは」

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後藤隆史

あなぶきハウジングサービス 後藤隆史(ごとうたかし)
北海道出身。管理組合様用火災保険の提案や管理委託契約書の作成、各種設備点検の発注業務を行っています。
フロント担当者の経験を生かし管理組合様の費用負担軽減ができるような火災保険の更新提案や各種設備点検項目の見直しなどを目指しています。少林寺拳法有段者(小学校2年生からやっていました)。火災保険や点検項目の見直しの際にはぜひとも御用命ください!
保有資格:管理業務主任者・宅地建物取引士
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