5年ぶりに変わった「マンション標準管理規約」改正のポイント⑥~暴力団員等の排除規定、災害時の管理組合の意思決定等~

北林真一 北林真一

平成28年3月のマンション標準管理規約および同コメントの改正には、外部専門家の活用やコミュニティ条項の再整理のほか、いくつかの改正点もあります。今回は、「暴力団等の排除規定」、「災害時の管理組合の意思決定」等について、ご紹介します。

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目次

  • 暴力団員の排除(第19条の2)
  • 敷地及び共用部分等の管理(第21条)
  • 窓ガラス等の改良(第22条)
  • 必要箇所への立入り(第23条)
  • まとめ

暴力団員の排除(第19条の2の新設及び同コメント①~③の新設追加)

専有部分の貸与に関し、暴力団員への貸与を禁止する旨の規約を定める場合、次のような条文およびコメントが整備されました。

【第19条の2の新設】

区分所有者は、その専有部分を第三者に貸与する場合には、前条に定めるもののほか、次に掲げる内容を含む条項をその貸与に係る契約に定めなければならない。

一 契約の相手方が暴力団員(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)第2条第六号に規定する暴力団員をいう。以下同じ。)ではないこと及び契約後において暴力団員にならないことを確約すること。

二 契約の相手方が暴力団員であることが判明した場合には、何らの催告を要せずして、区分所有者は当該契約を解約することができること。

三 区分所有者が前号の解約権を行使しないときは、管理組合は、区分所有者に代理して解約権を行使することができること。

2 前項の場合において、区分所有者は、前項第三号による解約権の代理行使を管理組合に認める旨の書面を提出するとともに、契約の相手方に暴力団員ではないこと及び契約後において暴力団員にならないことを確約する旨の誓約書を管理組合に提出させなければならない。

 暴力団員の排除(第19条の2関係コメント①~③の新設追加)

【第19条の2関係①コメントの新設】

第19条の2は、専有部分の貸与に関し、暴力団員への貸与を禁止する旨の規定を定める場合の規定例である。なお、必要に応じ、暴力団員だけでなく、暴力団関係者や準構成員等を追加する場合は、その範囲について、各都道府県が定めている暴力団排除条例などを参考に規定することが考えられる。

第19条の2第1項第二号又は同項第三号の前提となる区分所有者の解約権は、区分所有者と第三者との間の契約における解除原因に係る特約を根拠とするものであり、管理組合は、区分所有者から当該解約権行使の代理権の授与を受けて(具体的には同条第2項に規定する解約権の代理行使を認める書面の提出を受ける。)、区分所有者に代理して解約権を行使する。管理組合の解約権の代理行使は、理事会決議事項とすることも考えられるが、理事会で決定することを躊躇するケースもあり得ることから、総会決議によることが望ましい。

【第19条の2関係②コメントの新設】

なお、暴力団員への譲渡については、このような賃貸契約に係るものと同様の取決めを区分所有者間で結ぶといった対応をすることが考えられる。

また、暴力団事務所としての使用等の禁止については、第12条関係コメントを参照。敷地内における暴力行為や威嚇行為等の禁止については、第67条第1項の「共同生活の秩序を乱す行為」や区分所有法第6条第1項の「共同の利益に反する行為」等に該当するものとして、法的措置をはじめとする必要な措置を講ずることが可能であると考えられる。

【第19条の2関係③コメントの新設】

なお、措置の実行等に当たっては、暴力団関係者かどうかの判断や、訴訟等の措置を遂行する上での理事長等の身の安全の確保等のため、警察当局や暴力追放運動推進センターとの連携が重要であり、必要に応じて協力を要請することが望ましい。

敷地及び共用部分等の管理(第21条)

責任・負担者

【第21条第1項の改正】

敷地及び共用部分等の管理については、管理組合がその責任と負担においてこれを行うものとする。ただし、バルコニー等の保存行為(区分所有法第18条第1項ただし書の「保存行為」をいう。以下同じ。)のうち、通常の使用に伴うものについては、専用使用権を有する者がその責任と負担においてこれを行わなければならない。【第19条の2関係③コメントの新設】

保存行為

【第21条第3項、第5項、第6項の新設追加】

3.区分所有者は、第1項ただし書の場合又はあらかじめ理事長に申請して書面による承認を受けた場合を除き、敷地及び共用部分等の保存行為を行うことができない。ただし、専有部分の使用に支障が生じている場合に、当該専有部分を所有する区分所有者が行う保存行為の実施が、緊急を要するものであるときは、この限りでない

4.前項の申請及び承認の手続については、第17条第2項、第3項、第5項及び第6項の規定を準用する。ただし、同条第5項中「修繕等」とあるのは「保存行為」と、同条第6項中「第1項の承認を受けた修繕等の工事後に、当該工事」とあるのは「第21条第3項の承認を受けた保存行為後に、当該保存行為」と読み替えるものとする。

5.第3項の規定に違反して保存行為を行った場合には、当該保存行為に要した費用は、当該保存行為を行った区分所有者が負担する。

6.理事長は、災害等の緊急時においては、総会又は理事会の決議によらずに、敷地及び共用部分等の必要な保存行為を行うことができる。

バルコニー等、災害時の緊急時の保存行為

災害時における補修などの保存行為は理事長が単独で判断できることや、緊急時の応急修繕は理事会で決定できること等が規定されました。

【第21条関係⑤のコメント新設追加】

バルコニー等の経年劣化への対応については、③のとおり管理組合がその責任と負担において、計画修繕として行うものである。

ただし、バルコニー等の劣化であっても、長期修繕計画作成ガイドラインにおいて管理組合が行うものとされている修繕等の周期と比べ短い期間で発生したものであり、かつ、他のバルコニー等と比較して劣化の程度が顕著である場合には、特段の事情がない限りは、当該バルコニー等の専用使用権を有する者の通常の使用に伴う」ものとして、その責任と負担において保存行為を行うものとする。なお、この場合であっても、結果として管理組合による計画修繕の中で劣化が解消されるのであれば、管理組合の負担で行われることとなる。

【第21条関係⑥のコメント新設追加】

バルコニー等の破損が第三者による犯罪行為等によることが明らかである場合の保存行為の実施については、通常の使用に伴わないものであるため、管理組合がその責任と負担においてこれを行うものとする。ただし、同居人や賃借人等による破損については、「通常の使用に伴う」ものとして、当該バルコニー等の専用使用権を有する者がその責任と負担において保存行為を行うものとする。

【第21条関係⑨のコメント新設追加】

第3項ただし書は、例えば、台風等で住戸の窓ガラスが割れた場合に、専有部分への雨の吹込みを防ぐため、割れたものと同様の仕様の窓ガラスに張り替えるというようなケースが該当する。また、第5項は、区分所有法第19条に基づき、規約で別段の定めをするものである。

承認の申請先は理事長であるが、承認、不承認の判断はあくまで理事会の決議によるものである。(第54条第1項第五号参照)

【第21条関係⑩のコメント新設追加】

区分所有法第26条第1項では、敷地及び共用部分等の保存行為の実施管理者(本標準管理規約では理事長)の権限として定められている。第6項では、災害等の緊急時における必要な保存行為について、理事長が単独で判断し実施できることを定めるものである。災害等の緊急時における必要な保存行為としては、共用部分等を維持するための緊急を要する行為又は共用部分等の損傷・滅失を防止して現状の維持を図るための比較的軽度の行為が該当する。後者の例としては、給水管・排水管の補修、共用部分等の被災箇所の点検、破損個所の小修繕等が挙げられる。この場合に必要な支出については、第58条第6項及びコメント第58条関係⑤を参照のこと。

【第21条関係⑪のコメント新設追加】

災害等の緊急時において、保存行為を超える応急的な修繕行為の実施が必要であるが、総会の開催が困難である場合には、理事会においてその実施を決定することができることとしている(第54条第1項第十号及びコメント第54条関係①を参照。)。しかし、大規模な災害や突発的な被災では、理事会の開催も困難な場合があることから、そのような場合には、保存行為に限らず、応急的な修繕行為の実施まで理事長単独で判断し実施することができる旨を、規約において定めることも考えられる。更に、理事長をはじめとする役員が対応できない事態に備え、あらかじめ定められた方法により選任された区分所有者等の判断により保存行為や応急的な修繕行為を実施することができる旨を、規約において定めることも考えられる。なお、理事長等が単独で判断し実施することができる保存行為や応急的な修繕行為に要する費用の限度額について、予め定めておくことも考えられる。

第21条に関連して、

【第54条 議決事項の改正】

理事会は、この規約に別に定めるもののほか、次の各号に掲げる事項を決議する。

十 災害等により総会の開催が困難である場合における応急的な修繕工事の実施等

2.第48条の規定にかかわらず、理事会は、前項第十号の決議をした場合においては、当該決議に係る応急的な修繕工事の実施に充てるための資金の借入れ及び修繕積立金の取崩しについて決議することができる。

【第58条 収支予算の作成及び変更の新設】

5.理事会が第54条第1項第十号の決議をした場合には、理事長は、同条第2項の決議に基づき、その支出を行うことができる。

6.理事長は、第21条第6項の規定に基づき、敷地及び共用部分等の保存行為を行う場合には、そのために必要な支出を行うことができる。

窓ガラス等の改良(第22条)

【第22条第2項の改正】

区分所有者は、管理組合が前項の工事を速やかに実施できない場合には、あらかじめ理事長に申請して書面による承認を受けることにより、当該工事を当該区分所有者の責任と負担において実施することができる。

【第22条第3項の改正】

前項の申請及び承認の手続については、第17条第2項、第3項、第5項及び第6項の規定を準用する。ただし、同条第5項中「修繕等」とあるのは「第22条第2項の工事」と、同条第6項中「第1項の承認を受けた修繕等の工事」とあるのは「第22条第2項の承認を受けた工事」と読み替えるものとする。

【第22条関係⓸コメントの改正】

第2項は、開口部の改良工事については、治安上の問題を踏まえた防犯性能の向上や、結露から発生したカビやダニによるいわゆるシックハウス問題を改善するための断熱性の向上等、一棟全戸でなく一部の住戸において緊急かつ重大な必要性が生じる場合もあり得ることに鑑み、計画修繕によりただちに開口部の改良を行うことが困難な場合には、専有部分の修繕等における手続と同様の手続により、各区分所有者の責任と負担において工事を行うことができるように規定したものである。

承認の申請先等は理事長であるが、承認、不承認の判断はあくまで理事会の決議によるものである。(第54条第1項第五号参照)。

【第22条関係⑤コメントの改正】

また、第2項及び第3項は、マンションでは通常個々の専有部分に係る開口部(共用部分)が形状や材質においても大きく異なるような状況は考えられないことから、当該開口部の改良工事についてもその方法や材質・形状等に問題のないものは、施工の都度総会の決議を求めるまでもなく、専有部分の修繕等における手続と同様の手続により、各区分所有者の責任と負担において実施することを可能とする趣旨である。承認申請の対象範囲、審査する内容等の考え方については、別添2を参照されたい。

【第22条関係⓻コメントの改正】

本条の規定のほか、具体的な工事内容、区分所有者の遵守すべき事項等詳細については、細則に別途定めるものとする。その際、上述の別添2の内容についても、各マンションの実情に応じて、参考にするとともに、必要に応じて、専門的知識を有する者の意見を聴くことが望ましい。

 必要箇所への立入り(第23条)

【第23条第4項の新設追加】

理事長は、災害・事故等が発生した場合であって、緊急に立ち入らないと共用部分等又は他の専有部分に対して物理的に又は機能上重大な影響を与えるおそれがあるときは、専有部分又は専用使用部分に自ら立ち入り、又は委任した者に立ち入らせることができる。

【第23条第4項関係①コメントの新設追加】

第4項の緊急の立入りが認められるのは、災害時等における共用部分に係る緊急的工事に伴い必要な場合や、専有部分における大規模な水漏れ等、そのまま放置すれば、他の専有部分に対して物理的に又は機能上重大な影響を与えるおそれがある場合に限られるものである。

【第23条第4項関係②コメントの新設追加】

第4項の規定の実効性を高めるため、管理組合が各住戸の合い鍵を預かっておくことを定めることも考えられるが、プライバシーの問題等があることから、各マンションの個別の事情を踏まえて検討する必要がある。

関連記事はこちらから!

5年ぶりに変わった「マンション標準管理規約」改正のポイント①~区分所有法、管理規約等の改正の経緯~

5年ぶりに変わった「マンション標準管理規約」改正のポイント②~外部専門家の活用について~

5年ぶりに変わった「マンション標準管理規約」改正のポイント③~「外部専門家の活用」を必要とするマンションの実態~

5年ぶりに変わった「マンション標準管理規約」改正のポイント⓸~コミュニティ条項の再整理~

5年ぶりに変わった「マンション標準管理規約」改正のポイント⑤~駐車場の使用方法、専有部分の修繕等~

まとめ

マンション内に「怖いお兄さん」が出入りしては困ります。このような事態が想定される場合、「専有部分の暴力団員への貸与禁止」とか「暴力団員は役員になれない」等の規約改正を検討する必要があります。

また、災害等の緊急時における比較的軽度な保存行為について、理事長が単独で判断できること、保存行為を超える応急的な保存行為は、理事会で決定できるように、新たに規定されました。その他、窓ガラス等の改良必要箇所への立入りに関し、新たな指針も出されています。

管理組合の意思決定が機動的にできるように、管理規約を改正する際の参考となれば幸いです。

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北林真一

北林真一

あなぶきセザールサポート 北林 真一(きたばやし しんいち)
大学卒業後、一貫して不動産業界に従事してきました。
皆さまの大事なお住まい(マンション)のことは私にお任せください。
【得意分野】・合意形成の進め方 ・大規模修繕工事
【モットー】謙虚であれ、誠実であれ
【特技】日本酒と音楽(邦楽除く)は少しだけ詳しいです。
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