分譲マンションの町内会・自治会加入は義務?必須?

工藤剛

こんにちは。ホームライフ管理の工藤です。

今回は、分譲マンションにおける町内会・自治会加入の在り方についてお話をさせていただきます。

 

町内会費(自治会費)について、マンション管理組合の管理費会計から毎年支払っている管理組合は少なくないと思います。

例えば、1世帯あたり月額200円の町内会費だった場合、総戸数50戸のマンションでは1年で12万円の会費を管理組合から町内会に支払っていることになります。

しかしこの支払について、各世帯の町内会加入の実態や意向に沿わないまま、長年の慣例に従って、管理組合が払い続けていませんか?

もし、居住者のほとんどが町内会自治会に参加していない、あるいは参加したくないと思っている様子でしたら、管理費支出見直しの一環として、管理組合として一律に世帯総数の町内会費を支払うことを是正してはいかがでしょうか?

 

目次

①町内会加入に関する取り扱い方について
②マンション管理組合にて町内会費を徴収・支払いする際の留意点
③管理組合での一律加入・支払いをやめた事例のご紹介
④まとめ

 

 ①町内会加入に関する取り扱い方について

マンションで町内会に加入することには、以下のようなメリットが挙げられます。

・回覧版・掲示板等から地域の有益な情報が得られる

・住民同士の交流が促進される

・清掃活動やパトロール活動により快適で安心な住生活を営む助けとなる

 

上記メリットの詳細について、以下の記事でご紹介していますので、ご確認ください。

⇒分譲マンション居住者必見!町内会に加入する3つのメリットhttps://anabuki-m.jp/information/residents/17230/

 

そのメリット等を理解した上で、加入するか加入しないかは、各自の判断に委ねられるものですので、もし管理組合全体で一律に町内会に加入し、町内会費を管理組合会計で全戸分支払っているとしたら、適切な運用がされていないと言えるかもしれません。

 

かつては標準管理規約にも、管理組合の業務として『地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成』が条文に記載されていましたが、2016年の標準管理規約改正時に地域コミュニティの取り扱いについて再整理され、上記の条文が削除されました。よって、現在の標準管理規約においては、上記条文の記載はありません。

また、国土交通省の標準管理規約及びコメントによれば『各居住者が各自の判断で自治会、町内会等に加入する場合に支払うこととなる自治会費、町内会費等は地域コミュニティの維持・育成のため居住者が任意に負担するものであり、マンションという共有財産を維持・管理していくための費用である管理費等とは別のものである』とされています。

国土交通省が定めるマンション管理の適正化に関する指針においても『町内会等は、管理組合とは異なり、各居住者が各自で加入するものであることに留意し、管理費の使用使途について、マンションの管理と自治会活動の範囲・相互関係を整理し、管理費と自治会費の徴収、支出を分けて適切に運用することが必要であるとされています。

 

 

②マンション管理組合にて町内会費を徴収・支払いする際の留意点

国土交通省は、管理組合が自治会費の代行徴収を行うことを否定はしてはいませんが、その場合には、以下に留意することとされています。

出典:マンション標準管理規約の改正の背景・ポイントについて(国土交通省 住宅局市街地建築課マンション政策室)

ア 自治会等への加入強制にならないこと

イ 自治会等に加入希望しない者から自治費等を徴収しないこと

ウ 自治会費等を管理費とは区分経理すること

エ 管理組合による代行徴収に係る負担について整理しておくこと

 

もし、マンション居住者が町内会に加入していない、あるいは加入したくないと思っているにもかかわらず、管理組合で総戸数分の町内会費・自治会費を支出しているとしたら、居住者に対し、強制加入および費用の強制徴収をしていることと変わらないとも言えます。

町内会に加入しない住戸が存在すれば、その住戸数分を差し引いた金額を町内会に支払うべきであり、その会費の徴収についても、町内会非加入の住戸からは徴収せず、あくまで加入住戸からのみ徴収すべきです。全戸から一律徴収した管理費から町内会費用を支出することは、マンション居住者の加入・非加入の適切な峻別がなされないまま、町内会費が支払いされていることになります(町内会非加入の住戸も、費用を負担していることになってしまいます)。

 

③管理組合での一律加入・支払いをやめた事例のご紹介

私の担当した物件で、いわゆるDINKS(子を持たない夫婦)や単身者用の間取りが多いマンションがありました。町内会のイベント・活動にはそのマンションからは誰も参加していない様子であり、またその町内会活動の実態についてもマンションの住民にとってはよくわからないものでした。そのことから、マンションの理事会で全戸数分の町内会費を毎年支払っていることについて是正すべき問題として取り上げ、のちに管理組合総会で『管理組合で町内会費を支払うことを取りやめ、町内会加入の希望者は町内会に直接問い合わせ、その会費は加入者各自が直接町内会に支払う』ことを議案化し、賛成多数で承認されました。それ以降、管理費会計から毎年支出していた約5万円の町会費が削減されました。

なお、町内会ではそのマンションの町内会費を定額収入として見込んでいるため、町内会にとって寝耳に水の出来事にならないように根回しすべく、総会の約1年前にはこの議案を上程する件について町内会の方に連絡・相談していました。また、今後の町内会予算作成についても、当マンションの分が減収となることを見込んで予算を組むように事前に依頼しました。町内会にとっては手痛い減収となるため、いままで通り支払ってもらえないかと町内会から交渉がありましたが、町内会加入はあくまで各世帯の任意であり、その支払いも加入者からのみとしなくてはならないことをお話しし、理解してもらいました。

 

④まとめ

いかがでしたか。

200世帯を超えるような大型のマンションでは、防災対策を含めマンション内に自治会組織を構成する場合もありますが、それ以外のマンションは、地元自治会・町内会に加入することを検討する余地があります。

一方で町内会への加入率は、全国で低下の一途をたどっています。インターネットやSNSが普及した現在においては、町内会の役割の一つである情報提供や連絡の手段としての影響力も小さくなり、また他者との関わり合い方やコミュニティへの参加形態も多様化していることが要因なのかなとも思います。子供が少なくなっていることも、町内会加入率低下に関係していると思います。加入率低下の流れは、今後も続いていくのではと考えられます。

だとすれば、長年の間、管理組合で一律に総戸数分を支払っているマンションでは、マンション内の町内会加入数や加入希望数の実態に沿った適切な会費額と、長年変わらず支払っている会費額の乖離は大きくなるかもしれません。

地域によって町内会のルールはさまざまな内容があります。町内会に加入した場合のメリットと、その地域の町内会活動状況をよく考察しつつ、マンション居住者に対し町内会参加状況や加入意向を定期的に確認し、その徴収実態や町内会への支払額が適切かどうか確認することも併せてご検討いただければと思います。

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工藤剛

ホームライフ管理株式会社 工藤剛
大学卒業後、一貫して不動産業界に従事し、現在はマンション管理のフロント業務を担当しております。
マンション管理の経験は6年目となり、その間、築50年超えのマンション、20戸以下の小規模なマンション、350戸超えの大型高級タワーマンションなど、大小新旧さまざまなマンションを担当してきました。
各課題・問題に取り組んできた経験を基に、ブログを通じて皆様のお役に立てるような情報を発信して参りますので、どうぞよろしくお願いいたします!
保有資格:管理業務主任者、宅地建物取引士、損害保険募集人(基礎、火災)
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