さて、前回は管理会社のタイプをご紹介しました。(「あなたのマンション管理会社はどのタイプ?管理会社は3つのタイプに分けられる」)
今回は、1つの管理会社をより細かくチェックするための重要な8つの項目をご紹介します。
管理会社変更を検討されている方は、現在の管理会社と新しい管理会社を比較する項目として参考にしてください。
変更を検討されていない方も、現在の管理会社をチェックするためにも一度見てみてくださいね。
目次
- 国への登録
- 沿革
- 管理実績
- 経営状況
- マンション担当者(フロント)
- 管理員
- 委託契約
- お部屋内(専有部)サービス
- まとめ
①国への登録
・マンション管理業の登録を行っているか
マンション管理の適正化の推進に関する法律(適正化法44条1項)によると、「マンション管理業を営む者は、国土交通省に備えるマンション管理業者登録簿に登録を受けなければならない。」とされています。
この登録を受けていない者は、マンション管理業を行ってはいけないのです。
マンション管理業を営む者として、登録を行うことは当たり前のことですが、最近も無登録のまま営業を行っていた会社が摘発・送検されたケースがありました。
※無登録でマンション管理業を行うと、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科されます。(適正化法106条2号)
・国土交通省から監督処分等を受けたことはないか
マンション管理業の登録を行っていたとしても、適正な管理がきちんと確保されているということではありません。違反行為によって、監督処分等を受けていないか確認しましょう。
違反行為が発生した場合は、国土交通省からマンション管理業者に対する監督処分情報が公開されています。(監督処分より2年間掲載)。
※関東の場合はこちらから確認ができます。
②沿革
・マンション管理業を何年くらい営んでいるか
2008年のリーマンショック以降、不動産会社の倒産や事業整理、合併・買収などで、管理会社の再編が多く見られました。また、管理会社の再編が進んだ結果、事業転換や親会社からの分離独立なども行われています。
③管理実績
・管理組合数、管理棟数、管理戸数はどれくらいあるか
単棟マンションだけでなく、複数棟からなる団地型のマンションなど、管理しているマンションの戸数が多い会社は、マンションの数だけ知識や事例もあります。
しかし、棟数や戸数の実績ばかりに目を向けず、近年でその数にどのような増減があるのかも確認してみてください。管理実績だけでは分からない会社の管理体制が見えてくるかもしれません。
たとえば、総合数100棟の実績があったとしても、過去3年の間に他の管理会社に30棟変更され、新たに30棟管理を任された、という実態があれば、約3割は何らかの理由でマンションの管理組合から他の管理会社に変更されているということになります。
・戸数や立地など、どのようなタイプのマンションが多いか
管理しているマンションの戸数や立地にどのような傾向があるか確認すると、その管理会社が得意とする戸数や立地などが見えてきます。管理会社を変更する際は、ご自身がお住まいのマンションと戸数や立地に共通点があるマンションを他に何件管理しているのか、管理会社に確認してみましょう。似たタイプのマンションが多ければ、その数だけ知識やノウハウを持っていることになります。
④経営状況
・資本金や売上高、経常利益はどれくらいか
会社の業績はもちろんのこと、管理会社の再編があったのであれば、親会社などとの資本関係がどうなっているのか、複数の事業を営んでいる場合マンション管理業単独での状況を確認しましょう。
・社員数、有資格者は何名いるか
マンション管理業を営むにあたり、管理業務主任者やマンション管理士、宅地建物取引士などの必要な資格を持っている社員が何名いるのか確認しましょう。
⑤マンション管理担当者
・何棟のマンションを管理しているか
マンション管理業界で一般的には、1人あたり10~15組合を担当しているケースが多いです。
管理組合にとって、一番近い存在になるマンション担当者。1人で担当するマンションが多ければ、1つ1つの管理組合に割く労力や時間は少なくなってしまいます。
・理事会に毎回出席しているか
マンション担当者は、理事会に毎回参加して、司会進行や議事録の素案の作成、議題に対してアドバイス等を行います。
これは管理組合と管理会社で取り交わしている管理委託契約書に明記された管理会社で行う業務なのですが、管理組合で議事録の素案を作成(管理会社が行う業務)したりしていませんか?
・管理組合との約束はスピードをもって対応してくれるか
管理組合から依頼したこと、約束したことに対して迅速に対応しているか確認しましょう。
期限を守ってくれているか、期限までの中間報告はあるかなど、マンション担当者だけでなく、担当者をバックアップしてくれる体制が会社に整っているか確認することも重要です。
・管理組合に対して積極的な提案があるか
マンションを定期的に巡回して現状の把握をしているか確認しましょう。皆さんのマンション担当者は、マンションや住環境について、皆さんと一緒に考え、「もっと良くしたい!」「ここを改善しましょう!」といった提案をしていますか?
⑥管理員
・挨拶や身だしなみ、対応はしっかりしているか
マンションを最前線で管理する管理員の挨拶や身だしなみはしっかりしていますか? 管理員はマンションにお住まいの皆さまが快適にお過ごしいただけるように、清掃をはじめ皆様からいただいたご意見や依頼事項を迅速に管理担当者へ伝える、といった重要な役割も担っています。
・決められた業務を的確におこなっているか
管理員はマンションの共用部分の清掃や受付業務、点検の立ち会いなどを行っています。ほとんどのマンションでは、管理員業務の大部分を清掃業務が占めているかと思いますが、清掃業務に力を入れず、管理員室にじ~っと座っていることが多いなんてことがないか確認してみてください。
・管理員としての研修を定期的に受けているか
挨拶や身だしなみ、清掃業務、そして緊急時の対応など、管理員の質向上のために管理会社が定期的に研修を行っています。近年では、ご高齢の居住者のケアや認知症の方への対応など、管理員の研修内容は多岐に渡っています。
⑦委託契約
・定額委託業務費の内訳が明示されているか
マンションの管理運営について必要な費用なのかどうか、適正な金額なのかを確認するために内訳の明示は必要です。1つ1つの項目が明確になっていることで、どの項目に費用が多くかかっているのか把握することができます。
・管理業務の内容について作業基準が定められた仕様書があるか
作業基準が定められていれば、管理業務の内容が契約通りに行われているのか確認ができます。逆を言えば、曖昧なままであれば確認することも難しくなってしまいます。
・更新や解約について、一方的に管理組合に不利な記載がないか
管理組合の役員になった人は、是非契約内容を確認してみてください。
毎年代わる理事長が、契約内容をよく確認しないまま契約更新していたりすると、内容に変更があっても覚書の形で処理して契約書はもとのままになっていたりする場合があるので注意してください。
⑧お部屋内(専有部)のサービス
お部屋内(専有部)は管理委託業務の範囲外ですが、近年では多くの管理会社がお部屋内(専有部)のサービスに力をいれています。
サービス例…水廻りのトラブル駆け付け、家具の移動手伝い、ご高齢者向けの安否確認など
マンションにお住まいの方は、エントランスやエレベーター、階段などの共用部よりも、ご自身のお部屋の中で過ごす時間の方がはるかに多いですよね。皆さんのマンションには「住まいに関することは全て管理会社に相談できる、解決してもらえる。」と思える頼りになる管理会社がいますか?
まとめ
マンション管理会社をチェックするための重要な8つの項目、皆さんご確認いただけましたか?
項目内容を確認しやすくするために、項目確認シートを準備しました。
管理会社変更を検討されている方は、それぞれ候補の管理会社と現行を比較するためにも参考にしてください。
変更を検討されていない方も、現在の管理会社をチェックするために使ってみてくださいね。
松井 久弥
2000年あなぶきハウジングサービス入社。
全国10都道府県において、管理担当・リプレイス営業・新規拠点立上げ・部門責任者に従事。特にマンション管理会社のM&Aにおいては、案件化からデューデリ・譲渡契約・お客様対応全般・統合後プロセス(PMI)までを実践。
マンション管理士、M&Aシニアエキスパート。
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