大規模修繕工事にかかる費用やメリットは?工程や生活の制限も解説

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マンションの大規模修繕工事にどの程度の費用がかかるのかを把握していれば、無駄のない予算計画を立てられます。しかし、具体的にはどれほどの金額が必要なのかを詳しく知っている人は少ないでしょう。

この記事では、大規模修繕工事にかかる費用について1回目と2回目以降に分けて詳しく解説します。大規模修繕工事を実施するメリットや全体の大まかな流れ、居住者の理解を得るために必要なことも紹介しますで、ぜひ参考にしてください。

大規模修繕工事にかかる費用相場は?

大規模修繕工事の費用は、マンションの規模や工事の内容によって変動します。一般的に、一戸あたりの費用は約75~125万円が目安です。実際、国土交通省調査によって、多くのマンションが一戸あたり75万以上の費用を負担していることが明らかになりました。

マンション全体の費用に目を向けると、住戸数や工事の範囲によっても異なります。例えば、

中規模のマンションであれば総額7,600~8,700万円程度が標準的な費用とされています。

より大規模な建物になると1億円を超えるケースも少なくありません。さらに、このような費用には、共通仮設費用は含まれていない場合が多く、追加費用が発生する可能性もあります。

また、修繕工事は設計コンサルタントや工事監理の専門家に依頼するのも一般的です。その際、建物の診断や設計、施工会社の選定にかかるコンサルティング費用が発生することがあります。

コンサルタントの報酬は、担当者の経験や業務範囲によって決定され、数十戸規模のマンションで200~300万円、数百戸に及ぶ大規模なマンションであれば1,000万以上の費用が必要になるケースも考えられます。

費用の詳細を把握するためには、事前に建物の劣化状況を正確に診断し、診断結果に基づいて修繕計画を立てることが不可欠です。修繕費用を見積もる際には、建物の状態や修繕内容に応じた柔軟な対応が求められます。

2回目以降の大規模修繕費用はどのくらい変わる?

マンションの大規模修繕工事は、初回と2回目で大きく異なる点は少ないです。しかし、経年劣化により2回目の費用が増加する傾向にあります。

1回目の修繕では、主に基本的な修繕やメンテナンスが行われますが、2回目では建物の劣化が進行しているため、追加の補修が必要になる場合が多いためです。ここからは、2回目以降の大規模修繕費用についてさらに詳しく解説します。

2回目の大規模修繕の費用

2回目の修繕費用は、初回に比べて約20%増える傾向にありまあす。費用が増加する要因として、設備の老朽化や劣化の進行にともない、より大規模な修繕が求められることがあげられます。

2回目の大規模修繕では、単なる修復だけではなく、建物の機能性や快適性を高めるための改善工事が行われる場合もあります。そのため、初回の修繕より詳細な予算設定や修繕計画の策定が求められるでしょう。

3回目の大規模修繕の費用

3回目の大規模修繕工事では、さらに費用が増加する傾向にあります。建物の老朽化が進行し、設備の更新が必要になるケースが多いためです。

設備更新は、1回目や2回目の修繕では行わないことがほとんどです。設備更新すると、修繕内容が1・2回目と比較して拡大するため、結果として費用は約1.5倍に上昇すると見込まれます。

しかし、過去のメンテナンス履歴や管理状況によって必要な修繕内容や費用は異なるため、3回目の費用を一概に予測するのは困難です。適宜メンテナンスすれば、設備や建材が長持ちするため、3回目の大規模修繕工事でも費用を抑えられる可能性があります。

また、3回目の修繕は単なる建物の修復に留まらず、居住環境の改善を目的とした工事が含まれる場合があります。たとえば、高齢者のために階段に手すりを取り付けたり、段差をなくしたりするなど、バリアフリー化を進めなければならないケースもあるでしょう。

大規模修繕工事のメリットは?

大規模修繕工事を実施するメリットは、以下の5つです。

●安全性が向上する

●美観が向上する

●利便性が向上する

●トラブルを未然に防止できる

●資産価値の向上につながる

それぞれのメリットについて解説します。

安全性が向上する

建物全体の安全性を向上させられるのが、大規模修繕工事のメリットのひとつです。年月が経つにつれて、建物の構造や設備は老朽化し、そのまま放置すれば災害時のリスクが高まります。

修繕工事では、ひび割れや劣化部分の補強が行われるため、建物の耐震性が強化されます。

地震はもちろん、台風などの自然災害に対する備えが整えられているのは、住民を安心させる要素となるでしょう。

防犯対策も強化されるケースも多いです。例えば、最新のオートロックシステムや防犯カメラを導入するなどが考えられます。こうした防犯対策を講じれば、外部からの侵入を防ぎやすくなるため、住民がさらに安心して暮らせるようになるでしょう。

美観が向上する

大規模修繕工事のメリットとして、建物の外観が一新されることがあげられます。長い年月が経つと、外壁の汚れや塗装の剥がれ、ひび割れなどが目立ち、建物全体が古びた印象を与えがちです。

このような劣化部分を修復し、外装や共用部の見た目を改善するのが、修繕工事の役割です。修繕工事によって建物本来の美しさを取り戻せられれば、マンションの印象が明るくなり、住民の満足度も向上するでしょう。

利便性が向上する

大規模修繕工事は、マンション全体の利便性を向上させる機会となります。たとえば、高性能な断熱材を取り入れたり、防音性の高い窓を導入したりすれば、住環境の断熱性能や防音性が向上し、より快適な住環境を提供できます。

手すりやロープといったバリアフリー対応の設備を導入すれば、高齢者や身体の不自由な人に配慮した住環境を実現することも可能です。ほかにも、共用設備の改修や新たな施設を追加するのもよいでしょう。

たとえば、宅配ボックスの設置や玄関ドアの自動化などです。このような設備を取り入れることで、利便性が高まり、居住者の満足度が向上するでしょう。

トラブルを未然に防止できる

大規模修繕工事は、将来起こり得るトラブルを事前に防ぐための手段にもなります。たとえば、屋上の防水処理や排水設備の点検を定期的に実施すると、雨漏りや水漏れなどの問題が発生するリスクを低減できます。

また、エレベーターや電気設備などのメンテナンスを行えば、突然の機器故障や停電にともなうトラブルを未然に防ぐことが可能です。このような予防措置により、修繕や対応にかかるコストや労力を効率的に抑えられます。

さらに、居住者同士のトラブル発生を防ぎ、安心して住み続けられる環境を整えることにもつながるでしょう。

資産価値の向上につながる

大規模修繕工事を実施すると、建物の資産価値を維持、場合によっては向上させることも可能です。老朽化したマンションは、そのまま放置すれば市場での評価が下がり、資産価値も徐々に低減します。

とくに、劣化や破損が原因で問題が発生した場合、物価の価値が大幅に下落する可能性があります。しかし、定期的な修繕工事によって建物の状態を適切に保てば、資産価値を下げずに維持することが可能です。

また、バリアフリー対応や最新設備の導入など、時代にあった改修を施すことで、快適性の向上も期待できます。結果として、マンション全体の魅力を引き上げてくれるでしょう。

大規模修繕の流れ

大規模修繕の主な流れは、以下の通りです。

●修繕委員会の設置

●工事の発注方式を決定する

●劣化状態を診断する

●予算・修繕計画を検討する

●施工会社を選定する

●総会で決議を行う

●工事説明会を実施する

●契約・着工する

●工事完了・引き渡しする

それぞれの工程について解説します。

修繕委員会の設置

大規模修繕工事を成功させるためには、まず管理組合内で適切な体制を整えることが欠かせません。多くの場合、大規模修繕工事は理事会が主導する形で進行しますが、専門的なサポートが求められる際は「修繕委員会」を設置します。

修繕委員会は、マンションの区分所有者である組合員が参加できる委員会のことです。主に修繕計画の具体化や予算案の作成、管理会社との調整役を担います。

通常、修繕計画が予定される数年前から参加希望者を募り、組織的に活動を開始します。修繕委員会は、理事会の下に位置し、独自に動くことが多いです。

しかし、参加人数が不足したり、管理組合が不要と判断したりする場合は、設置されない可能性もあります。その場合、理事会が中心となり、マンション管理会社と連携して修繕計画を進めるのが通例です。

仮に修繕委員会を設けない場合は、引継ぎの際の効率化を図るために、理事の任期を延長したり半数ずつ交代する仕組みを取り入れるといいでしょう。

工事の発注方式を決定する

大規模修繕工事の成功には、工事の発注方式を決定することが重要です。発注方式は、工事の品質やコスト、スケジュールなどに影響を与えるため、慎重に検討することが求められます。

発注方式には、主に以下の3種類があります。

●責任施工方式

●管理会社活用方式

●設計管理方式

責任施工方式は、施工会社が計画から完成までのすべてを担当する方式です。管理組合にとっては、一貫したサポートが得られる点がメリットといえるでしょう。

一方、管理会社活用方式では管理会社の技術部門を活用して修繕設計などを行います。設計監理費用を抑制できる点や、管理会社の経験や知識を活用して工事を円滑に進められるのが利点です。

設計監理方式は、設計と工事をそれぞれ別の業者に発注する方式です。設計監理方式では、設計事務所やコンサルタントが工事の設計を行い、施工会社がその設計に従って工事を実施します。設計者が工事の進捗や仕上がりを確認し、質の維持を図るのも役割です。

管理組合のニーズや予算を考慮したうえで、最適な方式を選びましょう。

劣化状態を診断する

建物調査を実施し、建物の劣化状態を正確に把握することは、大規模修繕工事を進めるうえで欠かせない工程です。建物調査では、建物全体や共用設備にわたる劣化状況を詳細に確認し、改修や更新が必要な箇所を特定します。

劣化の進行具合や補修が必要な箇所が明確になると、最適な修繕方法や必要な対策が提案されます。加えて、提案をもとにした予算も提示されるでしょう。こうした詳細な報告書は、専門的な知識をもつ業者が作成するため、正確で信頼性の高い情報が得られます。

なお、建物調査を担当するのは、通常、大規模修繕専門のコンサルタント会社や建設業者、施工会社などです。修繕委員会や管理組合は、複数の業者から見積もりを取り、最適な依頼先を選定する役割を担います。

劣化状態の正確な把握は、マンションの資産価値や居住環境の向上に直結します。大規模修繕工事の効果を最大限に高めるためにも、必ず実施するようにしましょう。

予算・修繕計画を検討する

建物調査の結果をもとに、具体的な予算や修繕計画を策定するのが次の工程です。素手の立案されている修繕計画があれば、計画に沿って修繕委員会が調査データや議案書、概算見積もりをもとに工事内容と予算の詳細を検討します。

しかし、計画時点で積立金が不足している場合、優先度の高い箇所を選んで予算を効果的に活用することも必要です。たとえば、一時的に修繕費用を増加して集める手段を検討するなどが考えられます。

修繕の内容や工事範囲は、マンションの築年数や修繕歴にも左右されるため、細かな配慮が必要です。さらに、長期的な修繕計画も見据えた積立金の管理も欠かせません。

予算や修繕に関する計画を立てやすいように、現状の工事だけでなく、将来の大規模修繕に備えた計画の見直しや資金の積み増しを定期的に実施することをおすすめします。

施工会社を選定する

大規模修繕工事において、実施会社の選定は工事の品質を左右する非常に重要な工程です。最適な施工会社を選ぶためには、複数の業者から見積もりを取得し、慎重に比較検討することが求められます。

施工会社を選び間違えると、工事の品質が低下し、劣化症状の再発や余分な費用が発生するリスクが高まってしまいます。そのため、選定を誤られないことが、大規模修繕工事における大きなポイントといえるでしょう。

施工会社を選ぶ際には、会社の経営規模や技術力、実績がとくに重要です。規模の大きな会社は、比較的多くの優秀な職人を確保し、組織的な工事管理体制を整えているため、高品質な工事が期待できます。

また、検査体制の充実度やノウハウが豊富な点も、安定した品質を保つための要素となるでしょう。費用面だけでなく、過去の実績やアフターサービスの充実度、企業の財務状況なども総合的に考慮し、信頼できるパートナーを見極めることが必要です。

施工会社との関係は、工事完了後も長期的に続きます。施工中はもちろん、施工後もアフター点検やメンテナンスを通じて建物の耐久性を守り続けるため、信頼関係を築ける会社を選びましょう。

総会で決議を行う

大規模修繕工事を進めるときは、総会での正式な決議が欠かせません。総会では、工事計画の全容を組合員に対して説明します。具体的には、以下の項目があげられます。

●修繕工事の目的や内容

●工事の開始時期や工期

●施工会社の選定理由

●必要な予算

総会で組合員からの承認を得られれば、工事を発注できるようになります。総会での決議では、工事の透明性と公平性が重視されます。

まず、修繕工事の計画が組合員全員に理解・支持されるためには、準備段階で行われた選定の判断が公正であることを証明することが不可欠です。そのため、建物の劣化状況や修繕の必要性、予算の適正な使い道について、わかりやすく丁寧に説明するとよいでしょう。

総会に向けての段取りとして、報告会や広報活動、必要に応じた臨時総会の開催など、組合内での意見交換を積極的に実施するのもポイントです。このような場を設けることによって、組合員同士の意見がしっかりと共有され、修繕工事への理解を得やすくなります。

このような丁寧な準備とコミュニケーションが、総会での決議をスムーズに進めるカギとなるでしょう。

工事説明会を実施する

総会で大規模修繕工事の実施が正式に承認された後は、施工会社との契約を経て、工事の準備段階へと移行します。その際、とくに重要となるのが、工事着手の1ヶ月前に実施する工事説明会です。

工事説明会では、マンションの居住者に向けて工事の詳細や進行スケジュール、予想される影響について丁寧に説明します。とくに、工事による日常生活への影響や安全面の注意事項は、時間をかけてでも詳細に伝えましょう。

工事説明会の場を設けることによって、居住者とのコミュニケーションが円滑になり、工事期間中の協力体制が整いやすくなります。住民の理解と協力が得られれば、工事をスムーズに進められるでしょう。

大規模修繕工事は、居住しながら進めるケースがほとんどです。そのため、工事期間中の騒音や通路の制限、出入りの不便さなど、住民の生活に影響が出る場面も少なくありません。

居住者からの理解を得るために、説明会で上がった意見や懸念点は施工会社や管理者と共有し、影響をできる限り抑える対策を講じましょう。

契約・着工する

工事説明会を経て、近隣住民への挨拶や必要な準備が整った後は、大規模修繕工事の契約と着手に移ります。施工会社との契約締結後、工事が始まります。

事前に綿密な工事計画を立てても、着工後に明らかになる不具合が発生するケースは少なくありません。このような不測の事態に備え、工事期間中は管理組合や修繕委員会、実施会社、監理者が定期的に会議を行い、進捗や変更点を確認しながら柔軟に対応しましょう。

工事中、住民への情報提供は欠かせません。足場の設置や騒音、工事車両の出入りなど、生活環境に影響が出るため、住民の不安や不便を最小限に抑える努力が必要です。

工事の進行状況や日々の注意点について、掲示板やチラシなどを活用して丁寧に情報を発信することを心がけましょう。工事とは直接関係のない業務ですが、居住者の理解と協力を得るためには欠かせない取り組みです。

着工後の追加工事や予期せぬ費用が発生した場合は、妥当性や費用対効果について管理組合が慎重に判断する必要があります。工事が計画通り進行しているか、仕様に基づいて正確に実施されているか細かくチェックし、工事の品質を保つための管理も徹底しましょう。

工事完了・引き渡しする

大規模修繕工事が進み、最終段階に差し掛かると「竣工検査」を実施します。竣工調査とは、足場がまだ残っている状態で、施工箇所の仕上がりを詳細に確認する検査のことです。

竣工検査の際は、管理組合や監理者、施工会社が一緒に立ち会いましょう。不具合や修正箇所を見つけ次第、報告して業者に対応してもらい。完了後は再確認を行います。

このような厳格なチェックを通じて、すべての問題点が解決されたら、引き渡しへと進みます。引き渡しの際には、工事の内容を詳細に記録した竣工図書を忘れずに受け取りましょう。

竣工図書は、今後のマンション維持管理において重要な役割を果たす資料です。紛失しないよう丁寧に保管しましょう。また、工事が請負契約書に従って適切に行われたかどうか、手抜きや雑な仕上がりがないかも慎重に確認することも欠かせません。

工事完了後は、次回の大規模修繕に向けた長期修繕計画の見直しや修繕積立金の再評価を実施しましょう。将来の工事に備えた資金計画を適切に整備でき、建物の価値を長期的に維持していくための基盤を整えられます。

大規模修繕中の生活と対策

大規模修繕工事の期間は、工事や建物の規模によってことなりますが、おおよそ3~4カ月です。工事が始まると日々の生活に少なからず影響が生じ、予想以上のストレスを感じる人も少なくありません。

そのため、工事中の生活における具体的な影響と対策について理解を深めること不可欠です。特に重要なのが、以下4つです。

●騒音や振動

●ベランダの制限

●塗料・シンナーのにおい

●防犯面のリスク

それぞれの詳細について解説します。

騒音や振動

大規模修繕工事の際には、建物の外壁やバルコニー、廊下などの共用部分で作業が実施されます。適切に工事を進めるためには、足場の組み立てや壁面にドリルで穴をあける作業など、騒音や振動を発生させる工程が避けられません。

とくに音に敏感な居住者にとって、金属音や外壁作業による振動は大きなストレスの要因となります。窓を閉めても完全に遮断できない音や建物全体んい響く振動が直接体に伝わってっ来る可能性もあります。また、テレビや電話の音が聞こえづらい場合もあるでしょう。

受験を控えた学生や昼間に休息をとる必要がある夜勤者など、騒音の盈虚うを強く感じる場合には、耳栓などの対策グッズを準備するのが望ましいです。こうした小さな工夫によって、ストレスを軽減できます。

居住者が工事期間をより快適に過ごせるよう、必要に応じてこうしたグッズを準備することを呼びかけるとよいでしょう。

ベランダの制限

大規模修繕工事において、不便を感じやすいのがベランダの使用制限です。ベランダは法律上、避難経路として共用部分とみなされています。

つまり、工事の対象となるため、ベランダに置かれている私物は片づけてもらわなければなりません。観葉植物やアンテナ、網戸、物干し竿など、普段ベランダに置いているものを室内に移動させることになるため、居住者の生活空間が狭くなる可能性があります。

工事によっては、ベランダそのものが使用できなくなる場合も少なくありません。たとえば、外壁やベランダ内の壁の塗装作業、あるいは床面の防水処理などでは、塗料や防水材の乾燥時間が必要なため、昼夜を問わず一定期間ベランダへの出入りが制限されます。

制限期間は工事の内容によって異なりますが、通常は1~2週間程度が目安です。ベランダが使用できなくなる状況に備え、居住者には事前に片付けや対策を行ってもらう必要があります。そのため、適宜チラシなどで情報発信するように心がけましょう。

塗料・シンナーのにおい

大規模修繕工事において、塗料や防水材の使用は避けられない作業の一部です。

しかし、作業中に発生する強い臭いは、敏感な人々にとって不快や体調不良の原因となるおそれがあります。

マンションにおけるペットの飼育を認めている場合は、とくに注意が必要です。犬や猫といったペットは人間よりも鋭い嗅覚を持っており、塗料やシンナーの臭いがストレスを与える可能性があります。

とくに犬は、臭いによって体調を崩すことも考えられます。工事期間中は、ペットの健康管理を徹底するように居住者に徹底して呼びかけましょう。

対策を講じたにもかかわらず、ペットが不安を感じる場合は、居住者にペットホテルの利用を検討するように伝えるのも有効です。工事スケジュールを確認し、臭いが強くなるタイミングを前もって伝えれば、居住者はペットのために万全の準備を整えられるでしょう。

なお、臭いへの一般的な対策は、窓やドアを閉め切り、外気の流入を防ぐことです。加えて、換気の際は住居者に作業場所とは反対側の窓を開けるように促しましょう。空気清浄機を活用し、室内の空気をクリーンに保つことも効果的です。

このような適切な対策によって、臭いのこもりを軽減できます。

防犯面のリスク

大規模修繕工事中は、防犯面のリスクが増加します。工事中は、建物内外に見慣れない作業員が出入りするため、住民が不審者を見極めにづらくなるためです。

工事中であれば、居住者が仮に不審者を見かけたとしても「作業員だろう」と勘違いするかもしれません。居住者の防犯意識が緩んだ結果、不法侵入や空き巣被害のリスクが高まる可能性があります。

こうした状況を防ぐために、施工会社と相談して作業員の識別方法や出入りルールをあらかじめ決めておきましょう。その後、居住者にも決定事項を共有することで、不法侵入や空き巣が発生するリスクを抑えられます。

また、工事中は外壁の補修などのために足場が設置されることが多く、足場が不法侵入の際に利用される可能性が考えられます。足場の出入り口を施錠しても、不審者からすれば、足場へ侵入すること自体は決して困難ではありません。

そのため、足場にも適切な対策を講じることが求められます。具体的には、工事期間中は防犯カメラや防犯センサーを設置する、または足場を覆うシートを透明な素材にするといった措置が効果的です。

居住者が個別に行える防犯対策として、窓にサッシ補助ロックを取り付けることもよいでしょう。こうした小さな対策が、侵入者を遠ざける効果を生みます。

工事中も安心して居住者が生活できる環境を整えるため、施工業者と連携して防犯意識を高めることが求められます。

まとめ

大規模修繕工事は、マンションの安全性や美観を維持し、資産価値を高めるうえで欠かせない取り組みです。費用はマンションの規模や修繕内容によって異なりますが、一般的には1戸あたり 75~125万円が目安です。

2回目と3回目の修繕では、1回目と比較すると費用が増加する傾向があります。しかし、建物の機能向上やバリアフリー対応など、居住環境の改善も図られるため、得られるメリットは大きいといえるでしょう。

なお、大規模修繕工事中は騒音や振動、ベランダの使用制限、塗料の臭いなど、居住者の日常生活に影響が出る場合がある点には注意しなければなりません。事前の対策や工事業者との連携によって、快適な生活を保てるように努力しましょう。

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