賃貸マンションに住んでいるご入居者様から、様々なお困りごとのご連絡をいただく中で、多いのが“修繕”のご連絡です。住んでいる年数が長くなれば、水漏れや設備の故障など、お困りになったご経験がある方も多いのではないでしょうか?
本日は、ご入居中の修繕が発生したときに、知っておくとよい知識について、民法などの法律的な見解もまじえながら、分かりやすくご紹介します。
不具合(修繕)が起こったらまずやること
管理会社(大家さん)に連絡
まずは修繕の発生を管理会社また大家さんにすぐ連絡しましょう。不具合が発生したにも関わらず放置するのは絶対にNGです。放置することでさらに事態が悪化してしまうケースもありますので、発生後すぐに報告することをおすすめします。
また、勝手に業者を手配して修繕依頼をしたり、自分で直したりするのは原則NGです。賃貸の場合、マンションに付随するものは全て大家さんの所有物となるからです。その為、修繕する際には、軽微なものや緊急性があるものなどの例外を除き、大家さんの許可を得た上で行う必要がありますので注意しましょう。
緊急を要する場合
そうはいっても、すぐに対応してもらわないと困る!というケースもあると思います。
例えば、“水が止まらない”といったトラブルや、ガス漏れなど火災の可能性があるような緊急の場合です。
夜間や管理会社の定休日などでどうしても連絡が取れない場合は、まず自分で応急処置を行ってみましょう。
水漏れであれば「元栓・止水栓を閉める」などの対応で取り急ぎ水を止めることができる場合が多いです。
それでも自分ではどうしようもできないときは、対応してくれる業者を探して直接連絡をとりましょう。
後で詳しくご説明いたしますが、現在は民法改正により、自ら修繕を手配し、その費用を後日貸主に請求することが正式に認められています。
ただし、原則は大家さんの許可を得ることが必要ですので、後々のトラブルを避けるためにも、緊急性がある場合や修理が本当に必要な場合にのみにするようにしましょう。
修繕負担の基本的な4つの考え方
経年劣化・自然損耗は賃貸人負担
簡単に言うと「普通に使用していて壊れてしまった」場合です。
この場合は賃貸人(大家さん)の負担で修繕をします。設備品も大家さんの所有物ですから、当然大家さんが直すべきという考え方ですね。
故意過失は賃借人負担
一方でその修繕が故意・過失にあたると判断された場合は、賃借人(入居者)がその費用を負担しなければなりません。故意・過失とは、「わざと壊した」や「うっかり壊してしまった」という場合です。
この場合は入居者に修繕する義務があります。
ただし、うっかり壊してしまって費用負担が入居者であることが明らかな場合でも、原則どおり、直す際には大家さんの許可が必要です。管理会社に報告した上で判断を仰ぎ、勝手に直さないように気を付けましょう。
(賃貸人による修繕等)
第606条 賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。
2 賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない。
出典:民法
軽微な修繕は賃借人負担
日常的に入居者が使用することによって消耗するもので、軽微な修繕に関しては基本的に入居者負担となります。いわゆる“消耗品”に分類される場合の修繕です。
例えば、廊下やトイレ・洗面所・浴室などはもともと電球が備え付けの場合が大半ですが、長く住んでいると当然電球の寿命が来て切れてしまいます。こういった場合の電球交換費用は入居者が負担しなければなりません。その他、リモコンの電池や水回りのパッキンなど、通常使用して消耗するもので、簡単に交換できるものは入居者の負担になる場合が多いです。
軽微な修繕に関しては報告する必要はありませんが、判断に迷う場合は、管理会社に相談をしましょう。
善管注意義務違反は賃借人負担
賃貸マンションに入居する場合、賃貸借契約の中で入居者の“善管注意義務”というのが定められています。入居者は、善良な管理者として、きちんと注意を払って取り扱い(設備の使用)をしなければならない義務(責任)がある、という意味です。つまり、入居者の使用や管理の仕方が悪くて設備などの不良が発生したときは、入居者負担で修繕を行わなければなりません。分かりやすいように、いくつか例をあげてご説明します。
〇結露やカビに気づいているのに、掃除や換気をせず放置してひどくなった
〇飲み物や水をこぼしたまま放置し、シミ汚れなどがついてしまった
〇水漏れが発生したが管理会社に報告せず放置し、下の階のお部屋に被害が拡大した
放置や報告しないなどの行為も、善管注意義務違反に当たることがありますので気を付けましょう。
(特定物の引渡しの場合の注意義務)
第400条 債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして定まる善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。
出典:民法
民法改正で変わったポイント
賃貸人の修繕義務がより明確化
修繕が必要となった場合、基本は大家さんに修繕義務がありますが、入居者の管理や使用方法に責任があると認められる場合には、大家さんは修繕義務を負わないことが民法の条文に追記されました。(民法第606条)
賃借人による修繕権(*条件あり)が認められた
入居者が修繕の要望を出したにも関わらず対応してもらえなかった場合や、緊急性がある場合には、自分で修繕 の手配を行い、その費用を後日大家さんに請求することが認められるようになりました。(民法第607条の2)
但し、民法に則り修繕を行った場合でも、後々のトラブルになる可能性が高いことに注意が必要です。
特に修繕の内容が高額になる場合など、本当にやる必要のある修繕だったのか?手配した業者は妥当だったのか?緊急性があったのか?などの疑義が生じ、紛争に発展する恐れもあるからです。その為、よほどの事情が無い限りは、原則通り管理会社に報告し大家さんの許可を得て修繕してもらうのが良いといえます。
(賃借人による修繕)
第607条の2 賃借物の修繕が必要である場合において、次に掲げるときは、賃借人は、その修繕をすることができる。
一 賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき。
二 急迫の事情があるとき。
出典:民法
設備不良が生じた場合、賃貸人の家賃減額義務化
設備の故障などで賃貸物件の一部が使用できなくなってしまった場合のお話です。これまでは、入居者からの要求があった場合は、家賃の減額に応じる必要がありました。しかし民法改正により、損傷が発生した時点で、入居者からの要求が無くても、貸主に減額の義務が生じるという強い表現に変わりました。
また、これまでは部屋の一部「滅失」のみが対象であったのに対し、一部の設備が「使用できなくなった場合」も含まれるようになりました。
但し、こちらも実務上は問題が多いのも現状です。使用できない期間や、いくら減額すべきかなどの、明確な判断基準が決められていないからです。そのため実際は、「設備が壊れたから家賃がすぐに減額される」というわけではなく、あくまでも大家さん・入居者双方が話し合いの上、減額期間や金額を決定するかたちになるのが
現状です。
(賃借物の一部滅失等による賃料の減額等)
第611条 賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される。
2 賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、残存する部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができないときは、賃借人は、契約の解除をすることができる。
出典:民法
まとめ
いかがでしたでしょうか?民法改正の経緯として、大家さんが必要な修繕をしてくれない、というトラブルも過去多かったようです。一方で、入居者に責任があるような修繕については、大家さんは負担する責任がないことが明記されるなど、より修繕負担の区分が明確になったといえます。
賃貸借契約は貸主・借主の信頼関係の上で成り立つものです。円満な関係を継続するためにもお互いに気を付けたいポイントがあったと思います。トラブルなく快適な生活をお送りいただくために、皆様のご参考になれば幸いです。
安永菜美
賃貸仲介と管理の営業職を経験したのち、人事課に異動。
現在は中途採用をメインに担当しています。
会社魅力を色々発信していければと思います!
保有資格:宅地建物取引士・管理業務主任者・賃貸不動産経営管理士
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