給水用ポンプのメンテナンスって、どのくらいの期間でやったら良いの?

堀井康志

こんにちは。あなぶきクリーンサービスの堀井です。

 

普段水道をひねると特に苦労もなく水を手に入れることができますよね?そのお水は、地面の下に縦横無尽に這わされた水道管から供給されているのは、皆さんもご存じかと思います。

マンションなどの集合住宅に多いのは、敷地の内側に設置されている貯水タンクに一度水をためて、給水ポンプでそれぞれのお部屋に送り込む方法です。

給水ポンプに関してあまり詳しくない方も少なからずおられるのでは・・・と思い、今回はこの給水ポンプについてお話させていただきます。

 

 

給水ポンプ方式の種類

マンションで使われているポンプは複数種類があり、給水の方法によって使い分けされております。

一般的にマンション設備として使用されている3種類のポンプをご紹介いたします。

 

加圧給水ポンプ方式

 

マンション敷地内にある受水槽(貯水タンク)に一度水を貯めて、その水を各お部屋に送るために必要なポンプです。

このポンプは、災害時に断水になった場合でも受水槽に貯められている水を利用できます。加えて、高架水槽(マンションの屋上に設置されているタンクのこと)が不要なため、メンテナンスが少ない・美観を保つことができるということも利点ですね。

注意点としては、1日の使用水量の40~60%を目安に受水槽へ貯めるように定められております、災害時には各ご家庭で水を貯めて備えられることが予想されるため、実際には2~3時間くらいしか持ちません。

また、停電時にはポンプは完全に停止してしまいますので、いくら受水槽に水があったとしても給水できないという点には理解が必要です。ただし、タンク内の水はタンクの排水管から水を出すことで利用可能です。

 

揚水ポンプ方式

揚水ポンプは高架水槽が設置されているマンションで使用されているポンプです。加圧給水ポンプと同様に、水道管から一度受水槽に水を貯めたのち、揚水ポンプで屋上に設置された高架水槽に水を送ります。

水槽からの落差で水を送るため、停電になった場合でも高架水槽に貯まっている水を利用することが最大の利点です。加圧給水ポンプ方式と同様に、受水槽に貯まっている水はタンクの排水管から水を出すことで利用可能です。

 

増圧ポンプ方式

水道管から送られてくる圧力をそのまま利用して、増圧ポンプを介して直接各お部屋に水を送る給水方式です。

主に中高層マンションやビルなどに用いられております。

ただし、水を貯めておく設備がないため、災害時にはすぐに断水を起こしてしまうというデメリットがあります。

 

 

メンテナンスのタイミング

ポンプ本体の耐用年数は10年~15年とされています。これは、あくまでも目安の期間ですので、建物の大きさや毎日の給水量、定期的に実施するメンテナンスの頻度などによって変化します。

使用年数が長ければ長いほど、故障のリスクは自然と高まります。特に10年前後使用している給水ポンプで異変が起きていたらオーバーホール(分解点検)やポンプ交換のサインである可能性が高いです。

 

※オーバーホール

設置から5年程度で行うのが一般的です。3~4年で異音が発生したり、10年経過しても大丈夫な例もあります。機械ものなので、様子を見ながら時期を探るのもよいかと思います。

オーバーホールの際には経年により不具合が出る可能性がある部品の交換を併せて行います。

例えば、メカニカルシールと呼ばれる回転機械の動力を伝える軸部分に設置されるパッキンや、ベアリングと呼ばれる回転するものの軸を支える部品、などがあります。(他にも様々な部品の交換を行います。)

故障が発生する前にこのような部品を交換して、正常にポンプが動くようにメンテナンスを行うことが重要です。

ただし、オーバーホールを行ってもうまくいかず、1年くらいでまた異音が発生するなどの不具合が生じることがあります。これは、技術的な問題・・・というよりは、機械本体の個体差が原因の可能性があります。

 

※10年経過してのオーバーホール

金銭面での兼ね合いや、まだ不具合が出ていないとのことで単純にまだする必要がないとお考えの方もおられるかもしれません。それでは、10年経過してのオーバーホールについて考えられるリスクを見てみましょう。

  • 短期的に不具合が再発する可能性が高い。ポンプの中身ではファンが回転しており、長年使用していると回転バランスが変化する。新しい部品に交換しても、新品時のようなバランスに戻らない可能性が高い。
  • 部品の供給が終了している可能性がある。作業で交換したものとは違う部品を交換する必要が発生した場合、その部品が生産終了していると悲惨。そうなると、本体ごと交換が必要になるうえに、オーバーホールの料金が消えるわけではないので必然的に出費が増える

 

 

故障の原因

ここでは、主な故障の原因とそれによって起こる症状について見ていきましょう。

 

・ポンプと配管や、配管同士などの連結部用ゴムパッキンの劣化による水漏れ

・加圧給水ポンプ回転軸のメカニカルシール劣化による水漏れ

・揚水ポンプ回転軸のグランドパッキン劣化による水漏れ

・ネジの緩みに伴い発生する騒音

・ポンプユニット制御盤や基盤の破損による切り替え運転の不良

(ポンプが2基ついているケースがほとんどで、片方に負担がかかり過ぎないように自動的に切り返しながら  運転しています。)

・モーターファンの破損による水圧低下

・圧力タンク故障によるモーター発熱

 

この他にも故障の原因は様々ですが、かなりの専門分野で知識も必要となるため、故障原因が分からない場合はプロに相談していただくことが得策かと思います。

 

 

もしポンプが停止していたら・・・

昨日まで普通に動いていたポンプが、今日突然止まって水が出ない!というようなケースも実際にあります。
この場合は、電気系の設備になにか起きていないか確認するようにしましょう

ブレーカーの確認

給水ポンプの主電源にはブレーカーがついており、大きな電圧がかかると自動的に落ちます(落雷などが原因になることも)。この場合はブレーカーを一度リセットしたあと、上げてみてください

ただ、給水ポンプの絶縁が落ちている場合は漏電している可能性があります。この状態のときにブレーカーを元に戻してもすぐ落ちてしまいます。この場合は無理に何度も上げないようにして、すぐにご相談ください。

 

マグネットスイッチの確認

ポンプに動力を送る電圧を起動・停止する役割を持っているマグネットスイッチですが、経年等による劣化  でスイッチ内部の接点が溶着(溶けてくっつく)して破損してしまうことがあります。
この場合は同じ型のマグネットスイッチに交換する必要があります。

 

フロートレスユニットの確認

制御盤の中に小さな四角い箱のようなものが並んでいる部分をフロートレスユニットと呼びます。これは、貯水タンクの中の水位を検知するための電気信号回路です。

これが誤動作を起こることがあり、これによって水があるのに「水がないからポンプを停止しますよー」と間違った信号が送られた結果ポンプが停止して断水になってしまうことがあります。

この場合はフロートレスユニットの交換が必要ですので、早めにご相談されることをお勧めします。

 

 

まとめ

マンションポンプのトラブルは、専門知識が必要な修理やメンテナンスがほとんどの為、プロに依頼することをお勧めします。特に電気系トラブルは感電リスクがあるため、よく分かってないまま触るのは大変危険です。

また、専用の特殊工具の使用が必要だったりするかもしれません。

最近水の出が悪いなぁ・・・とか、ポンプ室の近くを通ると前は聞こえてなかった金属音がするなぁ・・・とか不具合のサインは意外と身近に転がっている可能性があります。

些細な違和感に気付くことで、最悪の事態を回避できるかもしれません。

もしそのような気になる症状があれば、いつでもご相談ください。

 

 

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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堀井康志

あなぶきクリーンサービス 清掃・設備管理課
堀井 康志 (ほりい こうじ)

香川県出身。消防設備点検・給水設備点検を担当。2010年入社。
前職のタイヤ営業マンを経て、2010年にクリーンサービスへ入社。
これまでに高松、広島、高知で既存マンション・戸建・テナント等の清掃現場に携わり、酸いも甘いも経験して参りました。
現在は愛媛県で点検業務を中心に、修繕工事作業も含めて現場責任者として奮闘しております。
プライベートでも10歳(三つ子)と2歳児の父として目まぐるしい日々を送っており、毎日が目が回るほど刺激的です。
マンション設備のオールラウンダーとして、皆様のお役に立てるような情報をわかりやすく発信したいと思っておりますので、宜しくお願いいたします。

【保有資格】
消防設備点検資格者・消防設備士・第一種衛生管理者
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