ホームライフ管理 ビル事業本部の渡邊です。
こちらの記事では実際にあった感知器誤発報の事例を用いて、消防設備点検の重要性についてご説明させていただきます。ご参考いただけますと幸いです。
自動火災報知設備とは
自動火災報知設備(自火報)とは消防設備のうち「警報設備」に属する設備です。
本体である「火災受信機」、火災を発見した人が押しボタンを押すことにより火災を通報する「発信機」、火災発生による温度上昇や煙の発生を感知するセンサーである「感知器」、音響鳴動することで火災の発生を周囲に知らせる「地区音響装置」(いわゆる非常ベル)
などで構成される一式の設備のことを言います。
自動火災報知設備は「発信機」や「感知器」が発報(=回路が短絡)すると作動するようになっていて、ゆえに自動で火災を警戒してくれる優れ物なのですが、機械である以上は定期的な点検やメンテナンスが必要で、エレベータ等と同じく法定点検の実施が義務付けられています。
消防法では建物に設置された消防設備について、6か月毎の機器点検の実施、1年毎の総合点検の実施を義務付けており、自動火災報知設備もその対象となります。
消防設備点検は居住者様のご協力が必要
ただし消防設備特有の性質として専有部内にも設置されているため、その点検には居住者様のご理解とご協力が必要となります。お知らせの掲示やポスト配布による事前告知を行う、時間帯指定を承る、再訪問の実施するなどして努力はさせていただいておりますが、全戸の点検を完了するのはなかなか難しいのが実情です。
中には長期にわたって点検を実施できない居室などもあり、その場合は設備異常のリスクも高くなります。今回の感知器誤発報とその対応事例もその一例になります。
感知器誤発報の事例
自身が新規担当することになった物件にて非常ベルが鳴動したため、緊急対応を行う事例がありました。設備管理会社が自社に移行してから間もなくのため、自社では消防設備点検をまだ行ったことのない物件でした。
現地確認および居住者へのヒアリングの結果非火災であることが判明したものの、共用部の確認だけでは発報原因は特定しきれなかったため、とりあえず受信機の仮復旧を行い、念のため終電まで物件近くにて待機をしながら様子を見ることに…。
再発報はなかったため引き上げを行いましたところ、その翌日に非常ベルが再び鳴動したため再対応を行うことになりました。こうなると再発性があるため受信機の信号復旧はできず、共用部のみならず専有部(居室)も含めた誤発報の原因調査が必要になります。
後日、調査作業を行うと…
オーナー様にこの旨を連絡し、受信機の警戒区域(発報階)のすべての入居者にアポイントを取って、各専有部内(居室内)の調査作業を行いましたところ…、あるお部屋の差動式スポット型感知器が発報しておりました。
天井には漏水の跡が認められ、それによって回路が短絡(ショート)することで感知器の誤発報していたようです。誤発報の原因が特定されたため、当該感知器を取り外すことで発報しないように応急措置を行い、後日漏水箇所の修理後に感知器ヘッド(本体)とベースを交換することで本復旧となります。
なお天井から漏水が起きたときの対応についてはコチラに記事がございます。
消防設備点検を受けないことによるデメリット
今回の事例は、居住者様が留守のため複数回にわたって消防設備点検を実施できなかったために発見が遅れてしまったパターンとなります。専有部内の点検作業実施率が低くなると以下のような安全上のリスクや維持管理上のコストが発生します。
・自火報誤報調査作業の追加費用が発生してしまう。 |
・非常ベルの再発報を防ぐため、調査作業の日取りが決定するまで未警戒区域が発生してしまう。 |
・誤発報の原因となった個所を復旧するための工事費用が発生してしまう。 |
未警戒区域とは、感知器や火災受信機が故障する、感知器の取り外しや回路の抜線を行う、火災受信機でマスク処理を行うなどして、自動火災報知設備が無効になっている区域のことで、火災感知機能や非常ベルの鳴動機能に支障が出ているため早急に修理対応する必要があります。
こうしたリスクやコストの発生は、消防設備点検を毎回行っていれば未然に防ぐこともできるものですので、ご都合がよろしければぜひご協力いただけますと幸いです。
消防設備点検ではここをチェックしている!
前述のとおり、消防法では6か月毎に機器点検を実施する旨が定められております。その際には点検作業員がお部屋内やベランダに入室させていただきますが、以下の項目などをチェックしています。
【自動火災報知設備】 |
①設置確認(感知器の数は合っているか、設置されている位置は適当か) |
②外観確認(感知器の傷やへこみ、錆びはないか、天井に汚れなどがないか) |
③作動確認(加熱試験機、加煙試験機などを用いて感知器の試験発報) |
【避難器具】 |
①設置確認(避難器具の数は合っているか 種類や型式は適当か) |
②外観確認(避難器具に錆びや痛みなどはないか きちんと収納されているか) |
③降下障害確認(避難器具をきちんと展開できるスペースが階下に確保されているか) |
点検作業員はただ試験機(棒状の点検器具)で感知器を発報させているだけではなく、実は設置位置や外観についても目視点検を行っております。たまにお部屋内を見回すことがあるのはそういった異常がないかを確かめているのです。
物件によってはトイレや押し入れなどを見させていただくこともあり、「なんでこんなところも見るの?」と思うかもしれませんが、消防法は日々改正されているため、新しい物件になると設置されている感知器の数は多くなる傾向があります。
またベランダにつきましては、ハッチ式避難はしご、緩降機などの避難器具が設置されているお部屋もあるため、該当するお部屋につきましては点検のために入室させていただくことがございます。
不躾ではございますがご協力いただけますと幸いです。
まとめ
今回の記事では、実際の誤発報事例を用いて消防設備点検の重要性についてご説明させていただきました。消防設備点検は他の設備点検作業と異なり、居住者様にご協力いただくことではじめて実施が可能となる点検作業となります。
不在等で点検が実施されないと安全上の理由はもちろんのこと、建物維持管理の観点からも好ましくないため、時間帯指定なども活用して何卒お受けいただけますと幸甚です。
消防設備点検は弊社ビル事業本部でももちろん承っております。こちらは6か月毎の法定点検はもちろんのこと、消防設備等点検結果報告書の作成、不良個所の報告と修繕提案、3年毎(特定防火対象物は1年毎)の消防提出までオールインワンで承ります。下記バナーよりお気軽にご相談くださいませ。
渡邊将貴
渡辺 将貴(わたなべまさき)
設備管理会社、ビルメンテンナンス会社を経て2021年ホームライフ管理入社。
神奈川エリアの賃貸物件および法人関係の建物管理業務(ビル管理)を行っています。
(設備管理・清掃実施・環境衛生・安全衛生など)
ビルや設備にまつわるお役立ち情報を発信していきますので
どうぞよろしくお願いいたします。
所持資格:建築物環境衛生管理技術者、消防設備士、FP検定2級
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