こんにちは、福田です。
これから梅雨の時期を迎える季節となりましたが、マンションの雨漏りだけは歓迎できません。
私の住んでいるところはマンションの最上階なのですが、幸いにして35年間雨漏りはまだ発生していません。
以前ブログで”建物は雨との戦いです。”なんて書きましたが、100%雨漏りのないマンションにするにはどうしたらよいのでしょうか。
今回は、過去の雨漏りの事例を紹介いたします。
目次
- 施工不良による雨漏り
- 原因が8年も分からない雨漏り
- 雨漏り寸前のマンション
- まとめ
施工不良による雨漏り
ケース①新築後まもなく天井から雨漏り
新築後間もなく居間の天井から雨漏りがするようになりました。
中間階の住戸だったので、当初、上階の窓周りのシーリング等の不具合の可能性が大きいと判断、是正しましたが効果はありませんでした。
次に、壁面全体の可能性があるとして、壁面を調査しましたが、ここでも原因不明。
該当する住戸の屋上部分の笠木、ドレイン周りの点検・補修も行いましたが効果はありません。
ある程度の経過観察の結果でしたが、壁面のタイルの一部が膨れる現象が発生しました。「漏水との因果関係があるのでは?」と、再度ブランコで壁面調査を行いました。
結果は構造スリット※(W=25~30)にまたがってタイルを貼っていたため、地震で建物が揺れた際に貼ってあるタイルが破損したことが原因と判明しました。その構造スリットを詳細に調べた結果、満足に止水用のシーリングが施工されていない事も判明。
元施工会社の責任で是正することとなり当然雨漏りも止まりました。
この場合は、明らかに施工不良が原因というケースでした。
※構造スリットとは?
マンションの構造体として多く見受けられるのが「柔構造」のラーメン構造です。
ラーメン構造は、柱と梁で構成され、壁式構造のように壁だけで構成されて剛性のある構造ではありません。
壁式構造のような「剛構造」では、外力に対し、その構造自体が持つ剛性や強度によって対抗しますが、ラーメン構造では、地震力のような外力に対し、外力を受けたときに柱や梁が柔らかく曲がることによって、エネルギーを吸収し、安全性を確保しています。
もし、ラーメン構造の柱や梁に取り付く壁が、必要以上に取りついていると、その壁の剛性により、水平力を受けた際の柱や梁の柔らかさが拘束されてしまいます。
柔らかく変形することによるエネルギー吸収性能を期待しているラーメン構造に不必要に壁を設けると、その変形性能が損なわれることになります。
そのためにマンションのコンクリート壁の中にスリットを設置して、柱と壁又は梁と壁の縁を切る細い開口を「構造スリット」又は「耐震スリット」と言います。
ケース②中二階のから雨漏り
中間階の住戸で床に雨漏りがするので調査を行いました。ちょうど大規模修繕工事中で足場があったので住戸の周囲の壁面を調査。
タイルとタイルとの目地部分に大豆ほどの大きさの穴を確認しました。
おそらくここが怪しいとにらみ、周囲を点検…。すると、なんと打診棒の音が軽いので、少し強めの打診を繰り返していると、壁にこぶし大の穴が開いてしまいました。
コンクリートの巣穴を発見、内部の鉄筋も錆が発生しており、明らかな施工不良個所でした。
原因が8年も分からない雨漏り
発生してからもうすでに7~8年経過していましたが、原因不明で住戸の部屋うちからコンクリートスラブのひび割れに樹脂の注入をしましたが効果はありませんでした。
雨漏りしている部屋の上部は上階のルーフバルコニー。色水試験などを行いましたが、最後まで原因不明でした。
最終的に、やむなくルーフバルコニー全体の防水を更新しました。更新の際に現場立ち合いを行いましたが、ルーフドレインの打ち込み不良の可能性が高いと思われました。ルーフバルコニーの防水は、通常の屋上仕様に多くみられるアスファルト露出防水仕様ではなく、コンクリート押さえ仕上げなので、いったん漏水が発生すると、なかなか原因が特定できない場合があります。
まさしく今回がそのケースでした。
雨漏り寸前のマンション
そのマンションの屋上に上がり、アスファルト露出防水(外断熱工法)を歩くと、まるで宇宙遊泳しているがごとく足元がふわふわした感触でした。
外断熱に用いられている断熱材(スタイロフォーム)が水を含んでスポンジ状態になり、その上を歩くとフニャフニャとした感触になっていました。しかし、不幸中の幸いか雨漏りはどこも発生していません。こういう場合、既存断熱材の全撤去が基本。
断熱材は防水層の下に位置しているため、上部の防水層を更新しても全く意味がなく、全面撤去するしかありません。
新築後10年以内のマンションなので、無償で是正ができるのに、雨漏りが発生していないがために指をくわえてみているしかないというのも変な話ですね…。
新築時の保証内容を確認すると「部屋内の漏水」が発生していないと無償の保証の対象にはならないのです。
本来は、こういう状態はむしろ雨漏りしないのが、奇跡であって、是正をするのが良心的なことだと思うのですが、世の中の分譲事業者・工事業者はすべてとは言いませんが襟を正してほしいですね。
まだまだ書ききれない事例はたくさんありますが、こういった事例のほとんどの原因は、新築当初の施工不良に起因していることがお分かりだと思います。もちろん、シーリング材の劣化などによる漏水事例も多々あるのも事実です。
「ヒューマンエラー」という言葉がありますが、建築業界の「ヒューマンエラー」は最近の傾向だと多くなりつつあります。
建設業界の万年人手不足が深刻です。最近のことですが、沖縄出身の18歳の少年が都内の建設現場にいることがニュースで報道されていましたが、もう国内だけでは建設業界の人手不足は補うことができないのではと思います。
すでに大規模修繕工事の現場でも外国人の姿を見受けるようになりました。
まとめ
改めて、「施工管理」が良ければ雨漏りの発生は最小限に抑えることができると思います。
今後、消費税の改定、東京オリンピックを控えての工事の需要がますます伸びると予測されますが最近、大規模修繕工事会社の現場代理人不足が言われています。また前回の消費税の改定時と同様なこと(駆け込み需要)が起きつつあります。
人手不足→施工不良が発生しやすい…。不安は残りますが、新築マンションの防水工事に限らず、すべての工事の施工不良が起きないことを願ってやみません。「施工監理」の必要性が求められます。
福田 純行
前職の設計事務所時代に手掛けた設計・監理物件は北海道は北見市から南は長崎の佐世保市まで。今となってはとても懐かしい。現在は主にマンションの大規模修繕工事に関するコンサルティング(大規模修繕工事の改修設計・長期修繕計画(案)の作成等)を担当。人が住むマンションのストーリーを一つずつ守るのが役目です。
目指せ、「チェンジ・ザ・ワールド」・E.クリプトン・・・・グルーブな仕事を
皆さんのために。
有資格:一級建築士
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