こんにちは、テクノ防災サービスの北村です。
今回は「避難器具」についてお話をしていこうと思います。
マンションにお住いの場合、ベランダに避難はしごやその他の避難器具の設置がある部屋があるかと思います。
避難器具は火災が発生して階段、玄関からの避難が困難になった場合に、避難階(通常は1階)まで別方向から避難ができるように建物に設置されている設備ですが、使用方法をご存知ない方がほとんどです。これを機に使用方法の確認もしましょう。
1. 避難器具の種類について
よく見られる避難器具には次のようなものがあります。名称は簡略化しております。
(1) 吊り下げはしご (建物の一部に引っ掛けて使用)
ベランダの手すりまたはベランダ壁面等に設置してある避難はしご取付金具に取り付けて使用します。
吊り下げはしごに下記のようなタイプがあります。
◇折りたたみ式=はしごが折り畳まれた状態ではしごのロックピンを外して伸ばす
◇ワイヤーロープ式=ぐるぐると巻かれた状態のワイヤーを伸ばす
※折りたたみ式
(2) ハッチ用吊り下げはしご
マンションの多くはこちらのタイプです。ベランダに設置してある「避難ハッチ」の中に避難はしごが取り付けてあるタイプです。
避難ハッチの上蓋・下蓋をロックがかかるまで全開し、はしご付近のボタン押すとロックが外れ直下階まではしごが使用できるようになります。緊急時以外でお子様が誤って開けないようチャイルドロックがについているタイプもあります。
直下階に到着したらまたその階に設置されたハッチを使用します。これを繰り返して避難階まで避難し ます。
地域によって消防隊が下から突入できるように下からワイヤーを引き、ハッチを開いて上階に上ることができるようになっているタイプのものもあります。
(3) 固定はしご
建物の壁面等にむき出しのはしごが固定してあるものです。サル梯子という表現が一般的だと思います。 常時使用が出来ます。見かけることはほとんどありませんが、収納式のタイプもあります。
(4) 避難ロープ
最も簡便な形態の避難器具で、繊維製のロープに金具等、滑り止めの為に手や足を掛ける部品が取り付けてあるものです。
避難はしご(吊り下げ)と同様樹脂製の袋またはプラスチックケースに格納されているロープを取り出し、窓の手すりに付属のカラビナで固定したり、窓の下端に付属の金具を掛けて使用します。
(5) 緩降機
使用する階から地上(例:5F→1F)まで直接降下することができる避難器具です。
つるべ井戸、シーソーをイメージしていただくとイメージしやすいと思いますが、 片一方が降りたら、もう片方が上に上がる原理です。一対のロープの先にある装着具を身に着け、1名ずつ交互に降下していく仕組みとなっています。
(6) 救助袋
主に自力避難が困難な方が利用される建物に設置されているケースが多いです。 例:病院・高齢者施設・幼稚園等 袋状の筒の中を滑り降りて使用する避難器具です。
◇垂直式=垂直に降下していくタイプ 袋の中をらせん状にぐるぐると降下していく。
◇斜降式=斜めに滑り落ちていくタイプ ※公園の滑り台のようなイメージです。
(7) すべり台
救助袋同様に主に自力避難が困難な方が利用される施設で使用される設備です。 見た目はまさに公園にあるようならせん状の滑り台です。
2. 避難器具に関する一般的な注意点
これらの避難器具で一般の方に気を付けていただく点としては、使用方法の確認が特に重要です。 誤った使用方法により怪我をする恐れがあります。
(1) 標識の表示状態の確認
避難器具にはその存在を示す標識が設けられていますので、壁等に掲示してある場合は物品等で隠すことの無いようにしておきましょう。また、劣化して文字が読めない状態の場合は交換または表記により読める状態にするようにすることが必要となります。
(2) 使用方法の確認
避難器具には一部を除き、使用方法の説明板がありますので、壁等に掲示してある場合は物品等で隠すことの無いようにしておきましょう。また、設置されているお部屋の方は使用方法をご一読いただき、有事の際は使用できるようにしましょう。
(3) 避難ハッチ付近の荷物整理
避難ハッチ付近 に物を置かないようにしましょう。洗濯機が避難ハッチ上に載っている場合があ りました。避難ハッチの開閉を妨げる位置に荷物等を置かないようにしましょう。
上階の避難ハッチの真下に物を置かないようにしましょう。はしごが完全に伸び切らずに降りられなくなります。
これは居住者様のみではなくほかの住民の方の避難の妨げになります。ご自身の部屋に避難器具があるからといってお隣も同様に避難器具があるわけではありません。隔て板を破ってお隣の方が通れるように荷物は置かないようにしましょう。
(4) 避難器具・取付具・格納箱・避難ハッチの腐食対策
建物の置かれている環境及び年月の経過により少なからず劣化するものですが、格納箱の蓋の閉め忘れや付近での塩分・腐食させやすい薬剤の使用などで劣化を早めることがないようにお気を付けください。
また、腐食や劣化等で使用に耐えない状況になったとしても、消防法で設置が必要な場所の避難器具を勝手に国家検定品(または認定品・性能評定品)でない避難器具に取り換えてしまうと消防設備点検では不良として扱われます(任意設置の場合を除きます)ので、ご注意ください。
3. 終わりに
避難器具は使用方法をご存じない方がほとんどです。点検で正常でも緊急時、使用するのは居住者様です。 これを機会にして使用方法の確認をしましょう。

北村順平
2007年あなぶきクリーンサービス入社
12年間 マンションの清掃設備維持管理の営業を担当、2019年7月からテクノ防災サービスにて、消防設備点検や特定建築物検査の営業を担当
施設管理に欠かせない法定検査になりますので、漏れの無い提案を心がけております。
初めての東京での生活で、休日には東京観光を楽しんでます。

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