マンション管理組合の会計監査のチェックポイントⅠ~収支報告書を監査する~

北林真一

分譲マンションで理事や監事に選ばれたとき、会計監査をするときのポイントを押さえておけば、もっと会計監査に興味が湧くかもしれません。

 

マンション管理組合の、一会計年度内の収入と支出の状況を示したものが収支報告書です。予算に対する実績として作成され、一定期間の収入と支出を記載します。収支報告書は、管理費会計、修繕積立金会計に区分されます。

会計監査の場合、監事は収支報告書に基づいて会計監査を行います。

①予算管理行為が適切かつ効率よく実施されたか
②管理組合の財産状況はどうなっているか
を確認し、帳票類を含め、会計年度全般の書類を閲覧します。

では、収支報告書の各勘定項目を監査してみましょう。

目次

収入項目を監査する際のチェックポイント

管理費等収入

収入は正しく計上されているか確認する

①全組合員の1カ月当たりの管理費等の合計を計算し、これに合計期間の月数(通常は12カ月)を乗じた金額と一致しているかを確認します。

②通常、定額の収入は予算計上金額と当期実績が一致しますが、一致しない場合は、会計期間の途中で管理費等の改定などが考えられます。不一致金額の原因を調査します。

未収管理費等は正しく計上されているか確認する

①勘定科目の内訳明細書の中の未収金明細書をみて、前期と比較し管理費等の滞納額が増加傾向にあれば、滞納者に対する督促業務が行われているか、未収金の回収につながっているかなどを確認します。

②長期滞納者に対する回収見込みがない場合は、法的措置を検討します。

滞納している管理費等の支払い義務は、滞納日から5年で消滅しますので注意が必要です。

前受管理費等が収入に計上されていないかを確認する

当期に入金された翌期以降の管理費等が、当期の収入として計上されていないか確認します。

雑収入など他の収入に計上すべきものが混入していないか確認する

収入の明細書や補助簿を見ると、雑収入など他の収入に計上すべきものが混入している場合があるので確認します。

受取利息

普通預金等の会計区分が正しく計上されているか確認する

管理費会計の普通預金利息が修繕積立金会計に計上されていないか確認します。

通帳と残高証明書等を確認する

通帳の入金額と利息計算書を見て、口座番号などから元本との対応関係が正しいことを確認します。預金残高の確認は、預金通帳や残高証明書の原本により確認します。管理組合の財産の横領等の抑止や不正な支出を防止するためには、預金残高の確認が必要です。

受取保険金

入金を確かめる

保険会社からの入金通知と記帳済みの通帳を閲覧し、入金金額と一致するかを確かめます。

対象保険事故の内容を確認する

保険事故の概要を把握し、共用部分の修理が必要なのか、あるいは同様な事故が発生する可能性はないのかを検討します。

受取保険金に対応する修繕費の支出を確認する

①保険事故に伴い発生した修繕費などの有無を確かめ、支出項目の明細書を確認します。

②対応する修繕費がある場合、受取保険金計上額と比較して、修繕費が保険金を超過した場合、実質的な自己負担額を確かめます。

雑収入

雑収入に計上すべきか否かを確かめる

勘定科目の明細書を閲覧し、雑収入以外の収入科目に計上する必要がないか確かめます。

繰入金(○○会計より繰入金収入)

総会議事録を閲覧し、承認された内容と一致しているか確かめる

前期の総会議事録を見て、会計区分、資金移動金額、金融機関が適合しているかを確かめます。

繰入金収入と繰入金支出が会計間で一致しているか確認する

管理費会計からの繰入金支出と修繕積立金会計への繰入額が一致しているか、計上漏れはないかなどを確認します。

支出項目を監査する際のチェックポイント

各種委託業務費(管理会社に管理を委託している場合)

定額委託業務費は会計期間に対応する金額(通常は12カ月分)で計上されているか確認する(管理委託契約書で月額を確かめる)

定額委託業務費は、会計期間の月数分が計上されるので、計算間違いがないかを確認します。

変動委託業務費は作業実施の有無を確かめる

①植栽剪定や排水管清掃などの作業を実施した分だけ支払います。年間のスケジュールを確認し、作業報告書、納品書などで実施の有無を確かめます。(※契約内容により支払方法が違う場合もあります)

②植栽剪定や排水管清掃などの作業費が予算計上金額以上に支出していないか

を確かめます。

水道光熱費

請求書・領収書と計上額が一致しているか確認する

請求書・領収書等の証憑を突合せし、確認します。水道料などの支払状況を確認すれば、その額の変動状況がわかります。

収入計上額と比較して支出額が多い場合は、その妥当性を確かめる

①支出額が異常に多い場合は、漏水の可能性もあります。

②マンション一棟で公共事業体に水道料を一括して支払い、管理組合は各戸から子メーターで検針し使用量に応じて水道料を徴収する例があります。

通常、水道料金は2カ月に一回の支払いで、前回の使用量に応じて料金計算が行われ、各戸から徴収した水道料収入の期間と対応しない場合があります。

③水道料収入と支出を比較して収支差額が大きい場合には、漏水の可能性や水道料計算に何らかの誤りが生じている可能性があります。

保険料

積立保険料の計上について確認する

①資産運用を兼ねて加入する積立型のマンション保険の場合、支払保険料は掛捨部分と、満期になった場合に返戻される満期保険金に分けられます。

②発生主義をもとに、満期時の満期返戻金は資産計上され、他方、掛捨保険料は毎年発生する費用のため、当期分の支払保険料は収支報告書に計上します。翌期以降の保険料は前払金として資産に計上します。

③掛捨型損害保険などの場合には、支払保険料の全額は支出として計上されますが、資産に計上すべき部分が正しく処理されているか確認します。

保険付保額の妥当性を確かめる

マンション保険の付保額がマンションの資産価値を下回っていないか、つまり、保険事故が発生した場合に受け取れる保険金の上限金額が低くないか、支出を節約するため保険料を下げて、付保金額が足りていなかったという事態に陥らないかなど、チェックが必要です。

消耗品費

証憑と突合せ、支出の合理性を検討する

請求書・領収書などの証憑と消耗品費明細書を突合せ、一致していることを確かめます。また、必要な支出であったかについて検討を加えます。

修繕費

作業実施と作業完了の事実を確認する

作業実施および完了の事実を、作業完了報告書や工事引渡書などで確認します。また、見積書を閲覧して、作業内容と支払金額が見合ったものであるかを検討します。また、追加工事の有無を確かめます。

支払の事実を確かめる

領収書等で計上金額と一致することを確かめます。

組合運営費、役員活動費

組合運営費と役員活動費の計上区分が適切か確かめる

①通常、組合運営費は総会開催にかかる必要経費(例えば、総会会場代、お茶代など)が計上され、役員活動費には、理事会開催にかかる必要経費および役員報酬などが計上されます。

②管理組合によっては、この両方を一括して、組合運営費に計上している場合もあります。

③両方の勘定科目が用いられている場合には、その区分を適切に処理することが肝要ですので、支出明細書を閲覧してその計上区分の妥当性を検討します

役員報酬は報酬規程等の定めと一致しているかを確かめる

役職により報酬金額が異なる場合が多いと思われますが、過去の総会承認による報酬金額の定めどおりに支払われているか確かめます。

雑費

雑費ではなく、その他の支出項目に計上すべきものが含まれていないか確認

雑収入同様、支出明細書を閲覧して、計上科目が適切ではないものが含まれていないかを確かめるとともに、支出の合理性を検討します。

雑損失

処理の妥当性を検討する

①管理組合で雑損失勘定を用いるのは、過去の収入・支出の訂正や管理費等の滞納者の未収入金を償却した場合など、かなり限定されます。

②したがって、雑損失の計上がある場合、発生原因を確認し、その妥当性を検討します。

予備費

実費が計上されている場合は、その内容を確かめる

①会計理論上は、本来、予備費という支出項目はなく、あくまでも予算上、具体的な支出項目が想定されない場合でも、万が一に備えて支出予算を計上するために用いられる項目です。

②一部には、予算超過支出を回避するため、本来の勘定科目には計上せずに、予備費として支出を計上する場合も見受けられます(臨時総会での承認を得なければ支出不可であるため)。支出実績が計上されている場合には、その内容について支出明細書を閲覧し、なぜ予備費勘定に計上したのか、その判断理由を確かめます。

まとめ

管理組合の運営は、予算に基づいて行われる予算準拠主義です。

必ず、予算を把握し、「予算にない支出はしない」「予算にない支出をするときは管理組合の承認を得る」を原則として業務を行います。どの勘定科目からお金を使用するかは、総会承認の予算書の摘要によります。

今回は、収支報告書の収入・支出における勘定項目を監査するときのチェックポイントをまとめました。

なお、小口現金では、「現金出納帳」や「小口現金明細表」等の帳簿を確認し、支出の証拠となる納品書、請求書、領収書といった証憑書類を確認しましょう。

The following two tabs change content below.

北林真一

あなぶきハウジングサービス 北林 真一(きたばやし しんいち)
大学卒業後、一貫して不動産業界に従事してきました。
皆さまの大事なお住まい(マンション)のことは私にお任せください。
【得意分野】・合意形成の進め方 ・大規模修繕工事
【モットー】謙虚であれ、誠実であれ
【特技】日本酒と音楽(邦楽除く)は少しだけ詳しいです。
  • twitter
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

ブログの読者になる

ブログの読者になると新着記事の通知を
メールで受け取ることができます。
読者登録はコチラ

最近書いた記事

関連の記事

  • facebook
  • feedly
  • rss
backtotop