認知症の家族が賠償事故を起こしたときに使える保険は?

志太波浩司 志太波浩司

こんにちは。
穴吹インシュアランスの志太波です。

2018年9月、総務省より「日本の総人口における70歳以上の割合が20%を超えた」との発表がありました。
高齢化に伴い、認知症の患者数も増加しており、2025年には700万人を超え、65歳以上の5人に1人が認知症患者になるとも言われています。
一方で核家族化も進んでおり、子世帯は別で暮らし、認知症を患った母親を父親が老老介護している・・・なんて家庭も多いのではないでしょうか。

そのような家庭でもし、
「認知症を患った母親がお風呂の水を出しっぱなしにし、居住マンションの下の階に水漏れをさせてしまった」
「道路に飛び出した母親を避けようとした車のドライバーが、電柱にぶつかって死亡した」
というような事故が起きたらどうなるでしょうか。

認知症の母親に責任能力がないと判断された場合、賠償責任は家族(監督義務者)にかかってきます。
今回は、そのような事態になった場合に備える保険についてお話します。

認知症患者の賠償事故で使える保険とは?

それはずばり、「個人賠償責任保険」です。

「個人賠償責任保険」は、他人の物や身体を傷つける等で法律上の損害賠償責任を負う場合に、保険金が支払われるというものです。
火災保険や自動車保険の特約として登場することが多いこの保険ですが、使い道が非常に多く、一家にひとつ必ず加入しておきたいものです。

詳しくはこちらの記事を参照↓

さまざまな場面で活躍する「個人賠償責任保険」とは

補償の対象者の範囲

ここで、個人賠償責任保険の対象者をおさらいしてみましょう。

①本人
②配偶者
③同居の親族
④別居の未婚の子

ここまでが従来型の個人賠償責任保険の対象者の範囲でした。
この場合、父親や母親が「本人」の契約では、別居の(既婚の)子は対象外になります。

しかし、2016年3月に最高裁の判決が下った、認知症患者の家族と鉄道会社の裁判をきっかけに、一部の保険会社では下記⑤⑥も対象者となるよう範囲を拡大する改定を行いました。

⑤ 本人が未成年者または責任無能力者である場合は、本人の親権者およびその他の法廷の監督義務者等
⑥ ②~④のいずれかが責任無能力者である場合は、責任無能力者の親権者およびその他の法廷の監督義務者等

この改定により、認知症の監督義務者が別居の既婚の子であっても、補償の対象者に含まれるようになりました。

 

注意点

認知症患者が必ずしも責任無能力者であるとは限らない

「責任無能力者」とは、11~14歳未満の者や、心神喪失者などのことを言います。認知症の程度は人によって異なるため、全ての認知症患者が心神喪失者、つまり責任無能力者とは言えないのです。事故を起こした際に責任能力があると判断されれば、当然本人に賠償責任が発生します。その際、本人が故意(わざと)に起こした事故と判断されれば、保険金は支払われません。

監督義務者が必ずしも責任を負うとは限らない

「監督義務者の責任」とは・・・民法上の責任能力の無い者(責任無能力者)が不法行為責任を負わない場合において、その者の法定監督義務者が責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任をいう(民法第714条1項本文)。この監督義務者の責任は、監督義務者がその監督義務を怠らなかったとき、あるいは、監督義務を怠らなくても損害が生じたであろう場合には責任を免れる。(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

つまり、監督義務者が精一杯介護を頑張っていたにも関わらず起こってしまった事故については、監督義務者に責任がないということです。この「精一杯」というのは様々な観点から考慮されるので、「ここまでやっておけば責任を問われる・問われない」という明確な基準はないのです。

加入時期によっては保険金が支払われない

個人賠償責任保険は昔からあるものですが、親権者や監督義務者が対象者の範囲に含まれるようになったのは、2016年~2017年頃からです。それ以前に販売されていた商品では親権者や監督義務者が対象者に含まれていないため、認知症患者が起こした事故でも保険金が支払われない可能性があります。
保険会社によって判断が異なりますので、当時の契約を見直し、保険会社や保険代理店に確認することが大切です。

保険金が支払われない事故例

改定後の個人賠償責任保険にきちんと加入していても、認知症患者が起こした事故であれば、どんなものでもこの保険で対応できるというわけではありません。

以下に保険金が支払われない事故例をご紹介します。

車を運転中の事故

認知症患者が起こした事故でも、自動車を運転中の事故は個人賠償責任保険の対象外です。自動車保険での対応になりますので、自動車保険にしっかり加入しておく必要があります。

同居の家族に対する事故

「同居の配偶者にぶつかって骨折をさせてしまった」などは対象外です。法律上の賠償責任はあくまで「他人」の身体や財物に危害を加えた場合に発生するためです。

電車の遅延損害のみや、精神的苦痛による慰謝料のみの賠償

何度も言うように、個人賠償責任保険は他人の身体や財物に危害を加えた場合に発生する法律上の損害賠償責任に対して支払われます。
例えば前述の鉄道事故のように、認知症患者が線路内に入り、電車を遅延させてしまった場合、電車自体に傷をつけてしまったり、乗客がケガをしたりした場合は、遅延損害も含めて補償の対象となりますが、遅延損害のみでは補償の対象外です。
また、認知症患者が奇声をあげることで近隣に騒音被害を出し、そのことで近隣住民から精神的苦痛に対する慰謝料を求められた場合でも、個人賠償責任保険から保険金を支払うことは難しいといえるでしょう。

このような事故例は「認知症患者だから」というわけではなく、個人賠償責任保険のそもそものルールとして補償の対象外となっているのです。

まとめ

前述の鉄道事故で、最高裁は「認知症患者の家族に監督義務はなかった」との判決を下したにもかかわらず、多くの保険会社は対象者の範囲拡大に踏み切りました。
認知症とは、患者自身も、介護する家族も大きな負担を強いられるものです。万が一のことがあったとき、少しでも保険で賄うことができたらという保険会社の判断だったのではないでしょうか。
保険金の支払いはケースバイケースとなることが多いですが、いざというときのためにご加入されることをおすすめします。

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志太波浩司

志太波浩司

穴吹インシュアランス 志太波 浩司(したば こうじ)
福岡県出身。大学は愛媛県松山市で4年間を過ごし、2014年穴吹インシュアランスに入社して4年目。
福岡で3年、2018年より香川県にて、損害保険・生命保険の募集業務に従事しています。
リスクに備える大切さを多くの方に理解いただけるよう、日々業務に励んでおります。プロ野球観戦が好きで、年に1度は球場に足を運んでいます。

保有資格:宅地建物取引士
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