管理組合役員必見!マンションにおける漏水事故6つのポイント~雨漏り、水漏れ~

北林真一

マンションにおける漏水事故の原因や経路はさまざまです。

例えば、「台風や大雨の時には漏水しないのに、風雨の強い時に限って漏水する・・・」ということがあります。漏水の原因箇所を特定できれば簡単ですが、それがなかなか難しい場合があります。

漏水」と言っても、建物の亀裂等から入ってくる「雨漏り」もあり、上階からの溢水による「水漏れもあります。

今回は、マンション管理会社の担当者として経験した“漏水事故6つのポイント”をご紹介します。

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①水漏れの発生箇所はどこか

水漏れについてはマンション管理組合として水漏れ事故の原因がどこにあるのかを調査する必要があります。水漏れ事故の原因が人為的なものかどうか、また原因となった欠陥の部分が専有部分か、共用部分かによって誰が責任を負うかが異なってきます。

まず、水漏れの発生箇所が、「専有部分」なのか「共用部分」のどちらかを確認しましょう。

「天井から漏水し、建具や家財道具等が水浸しとなり、水が引いたあとも壁や天井に染みができ、家具類が使い物にならなくなってしまった」というケースが見受けられますが、この場合は、まず漏水の原因となった欠陥のある箇所、例えば給排水管のひび割れによる漏水の場合はその専有部分の所有者が責任を負います。共用部分であれば、原則として区分所有者全員が責任を負います。

給水管、排水管は、本管が共用部分、枝管が専有部分と解されていますが、水漏れ箇所が専有部分か共用部分かが明らかでない場合は、法律では共用部分に原因があるものと解されています。

②水漏れの原因

水漏れ事故が誰かの過失が原因で発生したものなら、当然にその人が責任を負担することになります。

一方で水漏れ事故が誰かの過失によるものではなく、マンションの排水管の老朽化などが原因の場合は、その原因となった欠陥部分の所有者が責任を負うことになります。

■水漏れの原因は、大別すると次の3つに分かれます。

①居住者の使用上の過失などの人為的な原因に基づく場合
②施工上やリフォームの際など、工事業者の責任に基づく場合
③人為的でなく共用部分または専有部分の老朽化による場合

居住者の使用上の過失などの人為的な原因に基づく場合

事故の原因として人為的な過失が認められるケースとして、区分所有者に過失が認められる場合と施工時やリフォーム時の工事業者に過失が認められる場合があります。人為的な漏水事故には、いろいろ原因があります

≪人為的な漏水事故の事例≫

  • 全自動洗濯機のホースの接続がゆるく、使用中にホースが抜けて下階に漏水してしまった場合
  • 浴室の排水口に髪の毛が詰まった状態で、浴室の水が溢水して漏水してしまった場合
  • 玄関の防水処理がされていない床を水洗いし、下階に水漏れさせた場合
  • 居室内の水道パッキングの不具合で、下階に水漏れさせた場合
  • トイレを詰まらせて、汚水が溢水し、下階に水漏れさせた場合
  • その他排水口の不具合を生じさせ、下階に水漏れさせた場合
  • 窓を開けっぱなしで出かけ、大雨が降り込み、下階に水漏れさせた場合

 

各部からの漏水原因と防止策

・窓からの漏水
外出時の窓の閉め忘れなどの些細なことで、大量の雨水が室内に入ります。
クレセント(窓のカギ)まで、きっちりかけましよう。開閉が固い場合に無理な操作をすると建具金物が故障し、隙間から雨水がにじむこともあります。
(※通常、浴槽を除き一般居室の床は、防水されていません。)

・バルコニーからの雨水浸入
バルコニーにはドレンや排水溝があります。こまめに確認し、枯葉、土砂などを除去しましょう。
土砂などを流すと、ドレンや樋を詰まらせ、雨水が室内に入ってくる恐れがあります。床が防水されていない場合は、水を流さないようにしましょう。

・上階バルコニーからの漏水
ドレンや排水溝に枯葉やゴミ、土砂がたまると、排水しにくくなり、下階への雨漏りの原因にもなります。各住戸のバルコニーはこまめに点検、掃除をしましょう。

・設備機器、配管類から漏れてくる水
マンションには、給湯設備などの給排水衛生設備が、いろいろ使われています。
設備機器、配管類関連の漏水には、まず配管の劣化などで開いた穴やジョイント部分から、中の液体が漏れるという事故があります。
それ以外にも排水管が詰まることによって、排水が別のルートから出てしまったことによる事故もあります。
排水管に流してはならないものなど、注意すべきことを以下にまとめました。

☆トイレ関連の場合
便器が詰まった場合はラバーカップ(スパッド)を用いて清掃しましょう。
次のようなものを便器に流すと、詰まりの原因となります。
・箱入りのティッシュペーパー
・生理用品
・鉛筆、歯ブラシなど

☆その他の排水関連の場合
次のようなものは、排水管に流さないようにしましょう。
・調理用の油や油脂類(特に高温の湯)
・ディスポーザーの残りくず
・可燃性、引火性の石油類、有機溶剤
・糸やひも状の繊維
・酸、アルカリなどの薬品類

施工上やリフォームの際の工事業者の責任に基づく場合

水漏れの原因がマンション建設請負工事の不手際による場合があります。

≪マンション建設請負工事の不手際による場合の事例≫

  • 床下の給水管に釘が刺さっていたことが原因で下階に水漏れさせた場合
  • 給排水管等の接続不良で下階に水漏れさせた場合
  • その他、水回り関係のリフォーム工事を行った後に水漏れさせた場合

人為的でなく共用部分または専有部分の老朽化による場合

≪人為的でなく共用部分または専有部分の老朽化による場合の事例≫

  • マンションの排水管等の設備が老朽化して水漏れが生じた場合
  • 給湯管にピンホールが発生し、下階に水漏れさせた場合

やっかいな事例

建物の劣化に伴うトラブルで、専有部分を巻き込み、大事になる代表的なものが「雨漏り」です。その原因は千差万別で浸入箇所もさまざまです

屋上部分

屋上の防水には、寿命がありますが、寿命に達していなくても、ドレンの清掃や防水層の定期点検を怠ると、漏水などを起こすことがあります。
・日射によって押さえコンクリートが熱伸縮し、立ち上がり部分の防水層を圧迫し膨れや破損が生じ、雨漏りを引き起こす
・階段や設備の基壇まわりの防水層に亀裂が生じ、境目部分から雨漏りが発生
・フラットドレインが落ち葉で目詰まりし、ドレンまわりから漏水

壁面・窓まわり

・掃き出し窓のサッシ下枠と防水層の間がモルタルのみで防水層との納まりが悪く、防水層の裏側に雨水が浸入
・床面の防水層を壁まで立ち上げ、モルタルや巾木で押さえ、その上端部のひび割れでシーリングが切れ、雨水が下階の住戸に浸入
・風雨の巻き込みで、外壁面に設置されたレンジフードから雨水が浸入

意外と気付かない防水端部の不具合

特に最上階(上階が屋上の階)に住まわれている方だけに関係のある漏水です。屋上の床仕上げ面や防水層の劣化、ドレンの詰まり、パラペットまわりのシーリングの劣化など、考えられる原因はさまざまです。
・屋上パラペット笠木まわりや外壁の故障部からの雨水の浸入
・小庇上端や出窓まわりに亀甲状のひび割れが生じ、付け送りモルタルと躯体との取り合い部に雨水が浸入
・外壁のひび割れから、室内に漏水
・外壁のタイルの下地のコンクリートに入ったひび割れからの漏水
・雨掛かり・雨落とし部の雨水が伝わり軒天鼻先まわりの鉄筋露出故障

●ちょっと一言|シーリング材について
外部建具回り、コンクリートの打継部や、ひび割れ誘発目地などには、雨水の浸入を防止するためにシーリング材や機密ゴムが使用されています。このシーリング材は恒久的な材料ではなく、紫外線の影響や湿度変化による変形の繰り返しにより、経年とともに徐々に劣化して、肌割れや破断が生じ、室内にも漏水する場合があります。

③損害賠償責任を負うのは誰か

水漏れ事故が誰かの過失を原因としたものなら当然にその人が責任を負担します。他方、マンションの排水管の老朽化などが原因の場合には、その原因となった欠陥部分の所有者が責任を負うことになります。共用部分に原因があった場合には、区分所有者全員で共同して責任を負うことになります。

≪損害賠償責任を負う事例≫

  • 建築工事の瑕疵による場合は、分譲業者や工事を行った者が負います。
  • 設備の老朽化等で、発生箇所が専有部分であれば住戸の所有者が、共用部分であれば管理組合が負うことになります。
  • 洗濯機からの漏水等の人為的な場合は、溢れさせた居住者が負うことになります。居住者が賃借人であれば、賃借人が負い、通常住戸の所有者は負いません。

 

しかし、欠陥箇所である漏水部分がどこにあるのか、はっきりしていると問題ありませんが、はっきりしないケースもあります。区分所有法では、建物の設置または保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その瑕疵は共用部分にあるものと推定しています。要するに、区分所有者全員が共同して賠償責任を負うことになります。この規定は、欠陥部分がどこにあるのか不明の場合を前提としていますが、欠陥部分が明らかだけれど、それが共用部分なのか専有部分なのか不明である場合にも適用があると解されています。

④原因追及の方法

水漏れの原因追及には、日時を特定し、以下の事項を確認します。

  • 水漏れ事故が発生した時は、雨の日か、雪の日か、風の強い日だったか
  • 上階の人が不在時だったか、給排水時だったか
  • 給湯器、暖房の使用時だったか
  • 入浴時だったか
  • 上階の人に不注意はなかったか

さらに、漏水の性質を確認します。

  • きれいな水であれば、上水
  • 汚い水であれば、汚水か雑排水
  • 温水であれば、給湯、浴槽湯
  • 水回りに関係ない箇所であれば、雨漏り

⑤水漏れ箇所がわからない場合

水漏れの箇所がわからない場合は、専門業者に調査を依頼します。

管理会社に管理を委託している場合は、水漏れ情報を把握し、専門業者と日程緒性のうえ、原因が共用部分にある場合は、当事者へ原因と修理予定等について説明します。専有部分であれば、当事者間の解決となります。

調査方法として、通常は、漏水であれば、直上階の居住者に漏水の事実を確認し、漏水箇所の確認等の協力を求めることになります。この場合、管理組合や被害居住者から協力を求められた階上の居住者は、原則としてこれに協力する義務があります。

⑥損害賠償保険の申請

水漏れ事故として、思わぬ高額の賠償を負わされることがあります。

管理組合、所有者、賃借人のいずれも、事故に備えて損害賠償保険に加入しておくことが必要です。特に水漏れ事故の場合、共用部分か専有部分かが判然としないケースも多いので、管理組合が加入する「マンション総合保険」に特約を付加することにより、個人賠償責任を担保ることができます。

また、水漏れ調査費用まで支払われる保険もありますので、保険の賠償の対象、範囲等を確認しておくことが大事です。

管理組合で水漏れ事故に備えた損害保険に加入している場合は、管理会社、保険会社に連絡をするなどして、保険申請の手続きを行います。

まとめ

住戸内の蛇口を全て締めた状態でも、水道メーターが動いているときは、漏水の恐れがあります。早急に管理会社へご相談ください。また、長期間留守にされる場合は、水道メーター横のバルブを閉めることをお勧めします。

屋上の防水・外壁の仕上げ材などは直接日光・風雨・大気汚染などの厳しい自然環境にさらされており、経年とともに劣化が進行します。

屋上と外壁は早めの定期点検、補修をお勧めします。劣化診断、リフォームについては、管理会社にご相談くださいね。

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北林真一

あなぶきハウジングサービス 北林 真一(きたばやし しんいち)
大学卒業後、一貫して不動産業界に従事してきました。
皆さまの大事なお住まい(マンション)のことは私にお任せください。
【得意分野】・合意形成の進め方 ・大規模修繕工事
【モットー】謙虚であれ、誠実であれ
【特技】日本酒と音楽(邦楽除く)は少しだけ詳しいです。
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