(本エピローグ内容はフィクションであり、本ブログを閲覧してくださっている方へわかりやすく説明するための架空の登場人物の皆さんによる物語です。)
具志堅 進(ブログ主人公)と父はある不動産投資セミナーに参加していた。
前回の家族騒動を経て、父も分譲マンションでの民泊を現在の管理規約を十分に理解し
新たなる選択肢を模索するために手当たり次第次々にアイデアを持ち寄ってくるようになったので、
一度勉強会に参加してみようと家族会議で決定したのだ。
「みなさん、おはようございます。本日は○○社主催の不動産投資セミナーに参加いただきありがとうございます。
本日は投資初心者向けのセミナーとなっておりますので、すでに知っている情報があってもどうぞ2時間ほどお付き合いよろしくお願いします。」
「この会場にいるみなさんの中ですでに不動産投資に挑戦しているという方はいらっしゃいますか?」
セミナー参加者は12人いる。
ご高齢の方の1人参加が4名、スーツを着た青年実業家のような青年が1名。私たちと同じく家族で参加しているように見える方が2組ほど。
「はい、そちらの手をあげていただいた方は、どんな不動産投資をされていますか?」
自己紹介もなく、結構ぐいぐい聞いてくる変なやつだなと思ったが、その男性は返答した。
「私たちは夫婦で民泊不動産を購入して経営しております。まだまだ始めたばかりですが、宿泊されたお客様の喜ぶ顔が嬉しくて、息子と一緒に新たなる民泊物件を探すために各セミナーに参加して情報収集しています。本日もセミナー最後の未公開物件の情報を楽しみに参りました。」
「そうでしたか!私も何度か泊まったことがあります。ホテルには設置してないような家電や備品がたくさんあり家族は大喜びでした。はい、本日セミナー最後にはまだどこにで公開していない物件の情報を紙の資料としてお渡しする予定です。」
そうである。父も同じ目的だ。
マンションのポストに投函されたこの不動産投資セミナーの謳い文句「どこにも出していない未公開情報をセミナー参加者のみにご提供」が父にドンピシャに刺さったのである。
「早速ですが、会場のみなさんに質問です。利回りを見て不動産を判断できていますか?いかがでしょう?」
急に指されて質問がきた父は
「もちろん、利回りは知っています。不動産WEBサイトを見るときはキャッシュフローを計算するために利回りを参考に不動産を精査していますよ」
「それは素晴らしいですね!もうすでに会場には投資上級者の方がいるようですね。では、その不動産WEBサイトに掲載されている利回りを参考に、購入検討しているということですね。他にはキャッシュフローを検討する上で、不動産WEBサイトに参考にしている箇所はありますか?」
「もちろんです!貸し出し中物件などは家賃収入の額なども参考にしています」
「幅広い視野で、多角的に不動産を精査しているということですね!ご回答ありがとうございます。会場にいらっしゃるみなさんも同様に不動産WEBサイトに掲載されている利回りを参考にしている方はいますか?」
何人かの手が上がった後、不気味な笑みを浮かべて
「今、発言された方、手を上げていただいた方は
高確率で不動産投資に失敗します!」
なんだとー若造が!と言いたい顔をしている父の隣でセミナー担当者の話を続きに耳を立ててみた。
「利回りとは、不動産投資における物件選びの指標です。間違いありません。
ただ、利回りの数値だけで判断しすると、購入するべきではない物件を購入することになるでしょう。
数値や意味を把握しておかないと、高い・低いの判断はできないのです」
ほほーまともなことを言うじゃないか。と感心した隣で父が
「では、一体あなたはどういう数値を参考にしているのですか?」と少し怒りのこもった質問が
まるで父はセミナーのサクラ役として参加したのでは?と疑問に思える絶妙なタイミングで飛んだ。
「ありがとうございます。その質問にお答えするためにも全面のスライドをご覧ください」
①「表面利回り」(または想定利回り)
②「実質利回り」
「本日、参加されたこの初心者向けセミナーで少なくともこの言葉の意味の違いは理解されて帰ってください。
不動産WEBサイトに記載されている利回りはどちらだと思いますか?
多くの場合が
①の「表面利回り」(または想定利回り)です。
この表面利回りとはなんでしょうか?どうして①と②に分かれていて、不動産WEBサイトは①「表面利回り」(または想定利回り)を多く掲載していると思いますか?」
「実はこの【表面利回り】私からすると参考にならないまやかしの数値なんです。この金額には「管理会社の管理費」や払うべき税金」が含まれておりません。つまりどう言うことですか?そうです、購入した後にこの【表面利回り】よりも低い利回り(実質利回り)しか手元に残りません。ただの参考の目安の数値です。」
「1つ物件を例に計算してみましょう。」
こちらは沖縄にある木造物件の写真です。
例:木造戸建て 物件価格:3000万円、月額賃料10万円
①「表面利回り」(または想定利回り)の計算はシンプル
年間家賃収入 ÷ 物件購入価格 × 100 = 表面利回り(%)
120万円(10万円×12ヶ月)(年間家賃収入) ÷ 3000万円(物件購入価格 ) × 100 = 4%
これが表面利回りです。不動産会社の広告に掲載されている利回りは「表面利回り」であると思ってください。
家賃収入が下がったらとか、空室が応じたらどうなるんだ!というみなさんの心の声は聞こえてますよ〜。
それは一旦おいて、次に②「実質利回り」の話をしましょう。
より実態に近づけるために具体的に発生すると不動産投資にかかる経費を計算していきます。
②「実質利回り」(または想定利回り)の計算はシンプル
実質利回り(%) =(年間家賃収入 – 諸経費)÷ 物件価格 × 100
例:木造戸建て 物件価格:3000万円、月額賃料10万円、諸経費10万円
( 120万円(10万円×12ヶ月)(年間家賃収入) – 10万円(諸経費)) ÷ 3000万円(物件購入価格 ) × 100 = 3.6%
こちらの例においては、たった0.4%、諸経費10万円
ですがこれはただ計算しやすいために用意した数値ですよ。
諸経費は「管理会社の管理費」や「払うべき税金」しかありませんか〜?考えてみてください。
マンションにお住まいの方は「修繕積立金」もお支払いされていますよね、これも諸経費です。
不動産を購入する時に何を支払いますか?そうです!仲介手数料、これも諸経費です。
また、住宅ローン手数料、登記費用、火災保険料、水道加入負担金、家具、引越し費用など諸経費と認められるものは諸経費として計算します。
さて諸経費10万円で済ませたことのある方は会場にいますか?
さらに、先ほど皆様の心の声を拾いました質問も返答しましょう。
例:木造戸建て 物件価格:3000万円、利回り10% と言う物件があるとしましょう。
もちろん①「表面利回り」のことですよ。
「利回り10%」は魅力的に見えますよね。
「家賃収入が下がったらとか、空室が応じたらどうなるんだ!」と思われた方、鋭いですね〜
そもそも想定家賃での想定利回りでしたらどうなるでしょうか?
例:木造戸建て 物件価格:3000万円、利回り10%
において、家賃いくらで貸しているか計算してみましょう。
単純計算ですよ。
先ほどの例において
120万円(10万円×12ヶ月)(年間家賃収入) ÷ 3000万円(物件購入価格 ) × 100 = 4%
X万円と仮定(Y万円 ×12ヶ月)(年間家賃収入) ÷ 3000万円(物件購入価格 ) × 100 = 10%
と言うことは理解できますね。
年間家賃収入を X万円、月の家賃収入を Y万円 としただけですからね、拒否反応を示すには早すぎますよ。
さて、結論2.5倍の月額家賃「25万円」(Y万円) 年間家賃収入「300万円」(X万円)
となります。この計算が難しい方はここからのセミナーは静かにしていてくださいね〜
一瞬のスライドで計算できなかった進は「よし静かにしていようと」決めた。
この数字に関して、不動産売却をする担当者が沖縄の木造物件の近隣取引価格を調査しておらず、
本人の希望と想定した家賃がなんと!月25万円!きっと豪邸木造でしょうね。
にもかかわらず、物件価格3,000万円ポッキリです!
さあ、会場のみなさんはこの契約書にサインしますか?
きっと曰く付きな理由があり、引き渡しを受けた直後に知ることとなるでしょう。
家賃帯が適正かどうか、駅やバス停、駐車場からの距離、入居者や宿泊者が好むような立地がどうか
みなさんご自身の目で確認する必要があると思いませんか?
実は、表面利回りの高い物件は、見えない理由が存在していて調査すると
実は経費が大きくかかることがよくあります。
販売価格を下げて利回りを高く見せているものの、実際は経費金額が大きく、
「こんな不動産を購入するべきではなかったと」後悔することは嫌でしょう。
「弊社○○社では上記のような悪徳な案件は取り扱っておりません。
不動産選びは周りの友人や知人が詳しいわけがないのです。当たり前ですよ。私もこの道何十年で、確かな目を養って皆様のお役に立てると思っています。本当に良い物件は資金力のある私たちのような企業に流れてしまうものです。家族や友人に相談するよりもまずは専門家である私たちを頼ってほしいわけです。不動産購入・運用は任せてください」
確かに、この1ヶ月間家族で不動産情報を多数見てきて、
具志堅家では明確な判断基準がなく、間取り・立地・価格帯ばかりを見てきて少し疲れていた。
とは言っても、少し言葉が尖っていると思ったちょうどその時
「そんなことはありません!」父の大きな声が会場に響いた。
「確かに専門家の意見は重要です。しかしあなた方は私の親族でもなければ、長年付き合った友人でもない。1人では難しいでしょう。私も息子や息子の友人から教えてもらって勉強中の身ではあるものの、手数料でしか客を判断できないような言い方は絶対にしない。
周りの友人の声を聞いて、民泊運用してみたいと思えたことも感謝している。投資に向けて動き出したことで夫婦の会話も豊かなものになった。所詮個人ではありますが、個人レベルだからこその情報も仕入れられると思いますよ」
なんてかっこいい父なんだと感心した。
セミナーには悪影響だろうが、父との関係は今まで以上に強固なものになると確信に変わった。
この時以降のセミナーの内容をあまりよく覚えていない。
家賃相場の表だったり、マンションや戸建ての平均利回りを延々と説明された。
購入して良かったという過去の物件購入オーナーのビデオメッセージもあったが、それこそ不動産オーナーには見えないような男性のサクラ映像だっただろう。
セミナー会場から帰る私たち親子の背中に
「あの、すみません」
セミナーの冒頭に答えていた親子で参加していた男性だと覚えている。
「先ほどの熱のこもったご意見、心に響きました。
私は大家の会と言う不動産投資をしている、専業大家の集まる会の会長をしています比嘉と申します。良かったら私たちの勉強会に参加してみませんか?特に何かを売られる心配はないのでご安心ください」
「具志堅と申します。先ほどは大変お騒がせしました。セミナー参加されている方に迷惑かけてしまったなーと反省していたところです」
「いえいえ、私たちも親子で参加しまして。大企業じゃなくても優良な情報は集まると日々実感していますよ。もちろん企業の優秀なコンサルタントの方にも大変お世話になっています。
セミナー中に民泊と話されていましたね。ちょうど来月の勉強会のテーマが民泊管理会社についてなので是非大家の皆さんにも具志堅さん親子を紹介したいので是非!」
不思議な縁である。
父は不動産投資セミナーの謳い文句に釣られてきたものの、
これは面白い流れになってきた。
来月の勉強会が今から楽しみである。
(さ〜て、来月の進さんは?)
⇨進、民泊管理会社を知る
⇨進、大家の比嘉さんの謎に迫る
⇨進、父の背中を押す
の3本をテーマにお送りします。

瀬長雄作
瀬長 雄作(せなが ゆうさく)
沖縄県出身。2020年グループ入り。
2015年10月に沖縄県下初となる民泊管理専門業者「株式会社One Note」を創業しました。
沖縄県における民泊事業の第一人者として普及に努め、県内外の不動産オーナー様の有効活用提案などにも数多く携わり、物件管理実績として累計400件を超えております。
2020年4月に株式譲渡にてあなぶきグループ入りし、現在は民泊運用意外にも賃貸・マンスリー住宅や別荘管理など幅広い不動産の有効活用提案に注力しています。
保有資格:宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士
