屋内消火栓(屋外消火栓)での消火及び維持管理について

北村順平

こんにちは。テクノ防災サービスの北村です。

2021年4月に「消火器の放射訓練をしたことはありますか?」というお話を掲載させていただきましたが、「消火器」と並び「消火栓」という言葉も耳にされたことはあるのではないかと思います。

この消火栓という言葉、大きく分けて

●消防隊が消防活動における水の供給源(消防水利といいます)として設置されたもの

●一定以上の規模の建物で一般の方が初期消火の手段として使用するために設置されたもの

(区別するために屋内消火栓・屋外消火栓といいます)

の二種類に大別されますが、今回は後者の「屋内消火栓・屋外消火栓」設備の取り扱い方に関して動画を交え、また維持管理上留意いただきたいことについてご説明致します。

(なお、動画や写真では消防訓練や点検での操作を撮影しておりますので、実際の火災時と異なる部分がありますが、あくまで設備の形態・使用方法・動作状況の説明としてご覧いただけますと幸いです)

I. 屋内(屋外)消火栓の種類と起動方法(放水を始めるまで)

屋内(屋外)消火栓には「操作方法で分けて」2つのタイプがあります。

● 2人-3人で操作を行うタイプ(1号消火栓・屋外消火栓)

ホースが平たい状態で折りたたまれたり巻かれたりした状態で収納されているタイプです。

以前、2021年3月のブログにてご説明した「連結送水管」のホースと似ていますが、一般の方でも扱えるように水圧が抑えられています。(屋内消火栓用の場合、ホース径も細くなっています)

● 1人で操作できるタイプ(易操作性1号消火栓・2号消火栓)

ホースが円形を保った状態で収納されているタイプです。
こちらのタイプは緑色で「1人で操作できる」とのステッカーが貼り付けてあり、目印となります。

これらの2タイプは一部操作方法が異なるので、下記にそれぞれについての説明を記載します。
(消火栓によって操作方法が異なる場合がありますので。建物に設置されている消火栓の説明を確認しましょう)

1. 2人-3人で操作を行うタイプ(1号消火栓・屋外消火栓)

(1) 火災を確認したら、発信機(一般に火災報知機といわれるものです)のボタンを押します。

通常の場合ですと、これで消火栓ポンプが連動して起動します。
(通常は点灯状態にある赤い表示灯がこれと連動して点滅し、ポンプが起動したことを示します。ベル等も併せて鳴動しますので、それと共に「火事だ」と大声で知らせて人を集めます。集まって来た方々にも協力を依頼し役割分担をします)

(なお、消火栓格納箱の扉を開けた内側にポンプ起動ボタンがあるタイプもあります)

(2) 消火栓格納箱の扉を開け、1人をノズル担当者、もう1人をバルブ担当者として配置します。

ホースが捻れたり折れたりしないように伸ばす必要があるため、可能ならば3人配置して1名はねじれや折れを除く作業に専念するとよりスムーズかと思います。
2人しかいない場合はバルブ担当者がホースのねじれや折れを取り除く役割を兼ねます。

(3) 1人がノズルを取り、お互いに連携して火元へホースを伸ばします。

このタイプの消火栓の場合はホースを全て外して伸ばす必要があります。
前項(2)でお話しした通り、ねじれや折れがあると放水に支障がありますので、曲がり角の場合はできるかぎり緩やかに曲げるようにホースを導きます。

(4) 放水を始めます。

放水準備ができたらノズル担当者はバルブ担当者に放水合図を送り、それを受けてバルブ担当者はバルブを全開します。
これで放水が始まります。

2. 1人で操作できるタイプ(易操作性1号消火栓・2号消火栓)

(1) 火災を確認したら、発信機(一般に火災報知機といわれるものです)のボタンを押します。

通常の場合ですと、これで消火栓ポンプが連動して起動します。
(通常は点灯状態にある赤い表示灯がこれと連動して点滅し、ポンプが起動したことを示します。ベル等も併せて鳴動しますので、集まって来た方々にも協力を依頼し役割分担をします)

(2) 消火栓格納箱の扉を開け、バルブを全開してノズルをもって火の元へホースを伸ばします。

このタイプの消火栓はバルブを全開することでもポンプが起動し、赤いランプが点滅します。
また、このタイプの消火栓はノズル側に開閉レバーが付いている為、バルブを先に開いても放水が始まることは通常はありません。落ち着いて火元までホースを伸ばします。

(まれに訓練時の締め忘れその他の理由等で放水が始まってしまうことがありますので、ノズルは必ずしっかりと握っておきます)

1人用の消火栓はホースを全て引き出さなくても通水への影響が少ないように工夫されていますので、火元に届く距離だけホースを伸ばせば大丈夫です。

(3) 放水を始めます。

ノズルのレバーを開放して(ノズル自体を回して開放する場合もあります)放水します。
これで放水が始まります。

II.放水時の留意事項

一般的に放水について留意すべき事項としては、下記の内容となります。

●消火に危険を伴う場合には無理をせず避難を優先しましょう。

火災が起きた場合には「火を消さなければ」とは誰しも思うものですが、火を消すことに集中するあまり煙や熱気で負傷したり、逃げ場を失い命を落とす例が見受けられます。
あくまでも「後方に安全な避難経路が確保できている状態」で「消火活動もできる場合に限り実施する」と考えていただき、それが難しい状況では避難を優先しましょう。

(消火活動自体は消防隊に引き継ぐことになります)

●火の根元にむけて放水しましょう。

以前「消火器」の記事でも説明させていただいた通り、火炎の上部をめがけても火は消えません。必ず火の根元を狙って放水しましょう。

また、消防訓練時の様子を見ていると、特に小柄な方は放水時の水圧に耐えようとされるためか、ノズルを上方に向けてしまう例が見受けられます。一般の方でも扱えるよう、水圧は規格によって定められていますので、手だけでなく身体全体で支えれば水圧に負けずに放水できると思います。

●放水中はノズルから絶対に手を離さないでください。

手を放してしまうとホースが水圧で「暴れ」てしまい、ケガや建物の破損を引き起こしかねません。またこの状態のホースを再び掴むことは非常に困難を伴う為、それだけ火元に向けられる時間や水量が減り、消火活動が進まない結果となります。

●直接人体に向けて放水しないでください。

先に申し上げた通り、屋内(屋外)消火栓は一般の方でも消火活動ができるように水圧は規格により調整されていますが、かといって人体に向けて直接放水できるようには設計されておらず直接人体へに放水することは大変危険です。
蛇口のように途中でバルブを絞って放水することは基本的にできませんので、衣服への着火などで人体に向けて放水しなければ命が危ない場合でも、天井・壁等を用いて水流を反射させ、水圧を落とした水を人体に当てるようにしましょう。

●同時に使用できる消火栓は2箇所程度です。

あくまでも初期消火の手段であることもあり、同時に使用できる消火栓は2箇所程度であることを覚えておきましょう。
あまりに多くの消火栓を同時に使用すると水圧低下により消火活動がかえって難しくなる場合があります。

III. 屋内(屋外)消火栓に関する日常の留意事項

屋内(屋外)消火栓は消火器より一段大きな消火活動に対応できる重要な設備ですが、いざという時に力を発揮する為には日頃からの維持管理が必要です。

1. 消火栓格納箱の維持・整頓

連結送水管のときにも申し上げましたが、消火栓格納箱前にごみや物品等があり、いざという時に消火活動に使用ができないと思われる事例が見受けられます。

今回も非常に極端な例になりますが、このような状況になっている建物がありました。

迅速な初期消火を行う上でも、常日頃から消火栓格納箱の前に物品を置くのは避けていただきますようお願い致します。

2. 消火ポンプ室の維持・整頓

屋内(屋外)消火栓がある建物には、通常建物内に(稀に別棟になっている場合があります)ポンプを設置した「消火ポンプ室」が設置してあります。
消火ポンプや制御盤・配管自体と同様、維持には専門の知識が必要な箇所もありますが、ここでは一般の方でご注意いただける部分について説明致します。

●消火ポンプ室入口の表示を視認できるようする

法令で「加圧送水装置を設置する部屋の出入口には『消火ポンプ室』と表示すること」という決まりがございます。
劣化や掲示物・建物のリニューアルに伴う再塗装などでこの表示が見えなくなるケースが散見されます。
はっきりと視認できるように維持する必要があります。

●消火ポンプ室に物を置かない。

建物の収納スペースに悩まれているケースは多いかと思いますが、ある建物で消火ポンプ室を物置代わりにして塗料・脚立・建材・機械などがおいてあり、消火ポンプに近づくことが困難なケースがありました。

消火ポンプ室に物品(特に可燃物)が置かれていると、万が一それらに引火した場合は炎が燃え移り、消火ポンプが適正に動作しなくなる場合がございますので、お止めください。

3. 屋内(屋外)消火栓ホースの交換または耐圧試験について

また、こちらは業者等に依頼しての作業となりますが、連結送水管と同様に屋内(屋外)消火栓用ホースについても定期的に交換または耐圧試験が消防法により、必要となります。

●製造後10年を経過したものについて交換または3年毎に耐圧試験を実施します。(但し、1人で操作できる消火栓の「保形ホース」は除きます)

交換の場合と耐圧試験実施の場合、双方の写真がございますので、ご紹介します。

●交換の場合

左側の古いホースを右側の新しいホースに交換します。

●耐圧試験実施の場合

ホース結合金具部分ホース耐圧試験器に装着し、ホースに表示してある使用圧力まで水圧をかけて試験します。

IV. 結び

消火栓も消火器と並び多くの方が目にするものですが、消火器と比べて一段大きな消火活動が可能な設備です。
消火栓を使った消火訓練については消火器と比べ広いスペースが必要で、かつ一定の知識を持った人員が必要ですので、ご検討の上で建物の管理会社等に相談されるのも宜しいかと思います。

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北村順平

テクノ防災サービス 北村 順平(きたむら じゅんぺい)
2007年あなぶきクリーンサービス入社
12年間 マンションの清掃設備維持管理の営業を担当、2019年7月からテクノ防災サービスにて、消防設備点検や特定建築物検査の営業を担当
施設管理に欠かせない法定検査になりますので、漏れの無い提案を心がけております。
初めての東京での生活で、休日には東京観光を楽しんでます。

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