特定建築物定期調査とは?既存不適格について

北村順平

こんにちは、テクノ防災サービスの北村です。
今回は弊社で実施している「建築基準法第12条に基づく定期点検」の中の、
特定建築物定期調査」についてご紹介をさせて頂きます。

特定建築物定期調査では、敷地から建築物の外部、内部、設備に渡り多くの項目が調査対象になります。
今回は近年の法改正により、調査にて既存不適格として挙がる事の多い項目についてご紹介をさせて頂きます。
既存不適格の意味については、後ほど詳しく記載します。

 

【1.特定建築物定期調査について】

「特定建築物定期調査」とは、建築基準法第12条1項で定められた点検の1つです。
特定建築物定期調査の他にも建築基準法第12条では、
「建築設備定期検査」・「防火設備定期検査」・「昇降機等定期検査」がございます。

以前に下記の記事でそれぞれの検査の簡単なご紹介をさせて頂いておりますので、
合わせてご確認をお願い致します。
※対象となる建物、検査資格者等についてもご紹介しております。

「建築基準法第12条に基づく定期点検」って??

 

【2.特定建築物定期調査の目的】

特定建築物定期調査の目的は、
不特定多数の人が利用する建築物で防災設備の保全に努め、建築物の躯体などの劣化状況を把握して事故等を未然に防止することに加え、建物を末永く良好な状態に保つように努め、利用する人の安全を守ることです。

特定建築物定期調査では、大きく分類すると下記の6項目の劣化や損傷・維持保全の調査を行います。

①敷地及び地盤(地盤・塀・敷地内の通路等)
②建築物の外部(建物の基礎・土台・外壁等)
③屋上及び屋根(屋上・屋上周り・屋根等)
④建築物の内部(壁・床・天井、防火区画、防火設備等)
⑤避難施設など(廊下・避難上有効なバルコニー・避難階段・排煙設備等)
⑥その他(煙突や避雷針等)

※平成28年6月に建築基準法の改正で、「特殊建築物定期調査」から「特定建築物定期調査」へ名称が変更になりました。

 

【3.検査結果、既存不適格について】

まず特定建築物定期調査では、検査結果を基本的に3つの項目で判定をします。

要是正の指摘あり
着工時の法律に適合していない場合や、早急に改善を要する事項がある場合

既存不適格
着工時の法律には適合しているが、法改正後の法律に適合していない場合

指摘なし
「要是正の指摘あり」「既存不適格」が無い場合

建築基準法では、原則着工時の法律に適合する事が要求されている為、
既存不適格と判定された項目については、直ちに改善を求められる事はございません。
ただし、増築や用途変更等で確認申請をする場合は、現行法に適合する必要があります。

それでは、近年の法改正により特定建築物定期調査で実際に挙がることの多い
「既存不適格」の項目を3つご紹介致します。

 

【3-1.エレベーター扉に遮煙性能】

平成14年6月1日建築基準法の改正により、エレベーターの昇降路の防火区画に
遮煙性能」を有する事が義務付けられました。
建築基準法施行令第 112 条第 14 項

既存不適格を改善する為には、遮煙性能を有するエレベーター扉への交換、又は、
耐火クロススクリーン等の遮煙性能を有する防火設備を新たに設置する必要があります。

【3-2.階段に手すりを設置】

 

平成12年6月1日建築基準法の改正により、階段に手すりを設ける事が義務付けられました。
建築基準法施行令第23条3項

※ただし例外として、高さ1m以下の階段は適用されませんが、
共同住宅の階段は一段あたりの高さ(蹴上げ)が22cm以下と定められているため、
5段以上ある場合は階段手摺を設ける必要があるかもしれません。

【3-3.延焼のおそれのある部分の窓に網入りガラス】

昭和58年10月建築基準法の改正により、
延焼のおそれのある部分の窓に線入りガラスが認められなくなり、
網入りガラスを設けることが義務付けられました。

延焼のおそれのある部分とは、建築基準法2条1項6号で定められた範囲で
隣地境界線又は道路中心線から1階は3m、2階以上は5mの範囲内の部分のことを指します。

隣の建物で火災が発生した際、別の建物に延焼することを防ぐ目的で、
該当する範囲の外壁や軒裏には防火構造にすること、
開口部には防火設備を設ける事と定められています。

※防火地域・準防火地域の場合

 

話は少しそれますが、外壁に取り付けられている換気フードについても開口部となりますので、
該当範囲には防火ダンパー付きの換気フードを設ける必要がございます。

防火ダンパー付の換気フードについて、実際に閉鎖する様子を動画で撮影しました。

火災が発生した際には、熱により温度ヒューズが溶断し、ダンパーが閉鎖します。

 

【4.まとめ】

いかがでしたでしょうか。
今回は特定建築物定期調査の調査項目や、
「既存不適格」となる事の多い項目をいくつかご紹介させて頂きました。

建築基準法第12条に基づく定期点検は、建物を利用する人の安全を守る大切な検査になります。
検査後に要是正項目として指摘の挙がった項目は、出来るだけ早急に改善をお願い出来ればと思います。

※尚、全ての共同住宅が定期報告の対象となる「特定建築物」に該当する訳ではありません。
該当するかどうかは所在地を管轄する自治体により、用途・規模等の定めが異なります。

今回はこれで終わりになります。                                    それではまた次回もよろしくお願いいたします。

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北村順平

テクノ防災サービス 北村 順平(きたむら じゅんぺい)
2007年あなぶきクリーンサービス入社
12年間 マンションの清掃設備維持管理の営業を担当、2019年7月からテクノ防災サービスにて、消防設備点検や特定建築物検査の営業を担当
施設管理に欠かせない法定検査になりますので、漏れの無い提案を心がけております。
初めての東京での生活で、休日には東京観光を楽しんでます。

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